「本屋大賞」ノミネート10作が一目瞭然の「紙袋」 紀伊國屋書店が手作り、本好きさんたちが絶賛

「【本屋大賞コーナー】

「本屋大賞ノミネート作が10冊セットで売ってたらいいのに!」

と思ったことはありますか?

当店、やってみました!!背表紙が両サイドから見えるように、オリジナル窓付き紙袋を作成!

おまけもつけています(詳細写真2枚目)紙袋のままレジにお持ちくださいTM」

こんな文言とともに、紀伊國屋書店武蔵小杉店(神奈川県川崎市)が本年度の「本屋大賞」全候補10作の背表紙が側面のセロハンフィルム越しに確認できる「オリジナル窓付き紙袋」を作成、公式「X」アカウントからポストし、本好きネット民の心をわしづかみにしています。

 「本屋大賞」は2004年4月より始まった全国の書店員が最も売りたい本を投票によって選出する文学賞です。以下、一次投票を突破し、上位10作として「2026年本屋大賞」ノミネート作品に選ばれた本のタイトル(50音順)をご紹介しましょう。

「暁星(あけぼし)」湊かなえ〈著〉(双葉社)

「ありか」瀬尾まいこ〈著〉(水鈴社)

「イン・ザ・メガチャーチ」朝井リョウ〈著〉(日本経済新聞出版)

「失われた貌(かお)」櫻田智也〈著〉(新潮社)

「エピクロスの処方箋(せん)」夏川草介〈著〉(水鈴社)

「殺し屋の営業術」野宮有〈著〉(講談社)

「さよならジャバウォック」伊坂幸太郎〈著〉(双葉社)

「熟柿(じゅくし)」佐藤正午〈著〉(KADOKAWA)

「探偵小石は恋しない」森バジル〈著〉(小学館)

「PRIZE-プライズ-」村山由佳〈著〉(文芸春秋)

 現在は二次投票を経て、4月9日にこの中から選出される、栄えある「大賞」の発表を待つばかりです。

「素晴らしいアイデアですね 手書きのポップもぐっときます(全部読みたくて過去ツイ見てきました)」

「えー近所でやって欲しい 本屋大賞ノミネート作何故か買ってないし紙袋も最高 この紙袋だけやバッグ作ったら売れると思う!私なら買いますわ」

「特許出願必須!」

「オリジナル窓付き紙袋」への様々なコメントがリプライ欄に寄せられました。

 同店文芸・文庫担当で、公式アカウント(@Kino_Musako)の担当者であり、話題になった紙袋の発案者でもある、鶴見真緒さん(以下、鶴見さん)にくわしい話をお聞きしました。

■ワクワクするような紙袋をつくりたい!

 このユニークな「オリジナル窓付き紙袋」を思いついた経緯についてたずねると、「今年の本屋大賞がXで話題になり、『10冊セットで売ってたら良いのに』という呟きを見かけて思いつきました。ただ、多くの書店が実行に移すまでに至らなかった理由はよく分かります。

本は再販制度により、何冊セットであろうが値引きをしてお得感を出すことはできない、単行本を10冊買っても良いと思えるくらいの本好きは、ノミネート作品のうちどれかは既に持っているだろう…など」と制作前の懸念を打ち明ける鶴見さん。実際、何作かはすでに読んだ、との声もリプライ欄には届いていました。

「確かにそうなのですが、あまりやっている店舗を見かけないということは話題になる余地があるのではないかと思いました。実際に売れなくても、話題にだけでもなれば!面白いことをやっているお店があると知って貰えたら!という一心で制作・発信をしました」と制作時の心情を話しました。

「また、『オリジナル窓付き紙袋』の制作は、ただの紙袋に入れて店頭に出したのでは中身が見えず実際に手を伸ばしにくいだろうな、という気付きから始まりました。“映え”も重視したい、“10冊セットである”こと以外にも、“この紙袋が欲しい”という新たな付加価値をつけたい、という思いがありました。話題作の背表紙がずらっと並んでいるだけで、非常に映えますしワクワクしますよね」とアイデアを具体化していった流れを教えてくれました。

■まさかの「超手作り」

 実際の制作にあたってこだわった点をお聞きすると、「こだわった点は、“すべてにおいて超手作業”というところです」という驚きの答えが返ってきました!

「試作をしながら、重力で底が抜けないように紙袋を二重にして強度を出し、重なる紙袋も窓を邪魔しないように側面はくり抜いて…とひと手間かかっています」

「窓の部分はへたらないよう硬めのフィルムがピンと張るように注意深く採寸してテープで貼っています。広すぎず狭すぎず、背表紙たちが美しく見えて且つ強度を保てるサイズの窓を目指しました」とのことで制作時の苦労がしのばれます。

さらに「この紙袋がお手元にわたった方にだけ、一枚一枚切ったり貼ったり補強したり、の手作り感を味わっていただけるかと思います(笑)」と紙袋に込めた思い入れを話す、鶴見さん。

■「我ながら震える」重量とお値段に

 その労力を思うと身が震えてくるようなこの紙袋ですが、その価格や重さ、「おまけ」についてなど、セットの詳細はどのようなものになっているのでしょうか。

「価格は税込み20240円、重さは計量器がないので正確な数値は謎ですが、片手にぶら下げて長距離歩くのは二の腕の筋肉痛必至な重さ…なので、無料配送サービス(店頭でのお買い上げ1万円以上で配送無料)をおすすめしています」

「前述したように値引きができないので単品×10冊と全く同じ値段なのですが、10冊揃えるとこれだけお値段が張るのだなと我ながら震えます」

「またおまけとして、私がオリジナルで作成した、『ノミネート10作品のポジショニングマップ』を封入しました。ホワイト←→ダーク、泣ける←→ミステリーのように4象限(直交座標で4分割された各領域)を設定し、それぞれの作品がどの位置に属するか、10作品全てを読んでいる私の完全なる主観でマップ分けしたものです。

セットを買って下さる方は、まだどれも読んでいない方が多いかなと思い、どれから読むべきか悩んだ時の指針の一つになれば、との思いから作成しました」と語る鶴見さん。この「おまけ」だけでも読み応えがありそうですね!

「他にもおまけとして付けられそうなもので、【全作品に大賞あげちゃうよコーナー】を独自展開していた手書きPOPも候補にあったのですが、いかんせん手書きのため、封入用に作り直すとなると時間がかかってしまいます。今回は初動の速さ重視ということで、「ポジショニングマップ」+「窓付き紙袋」を付加価値としました」と制作の裏側を明かしてくれました。

「手書きPOP」の写真も話題になったポストにて公開していますが、こちらも「文芸界隈のヒミツ大放出大賞」「全ミステリー好きに捧ぐ最強本大賞」などと、本好きさんたちの心を絶妙にくすぐる内容になっていて、ぜひ「おまけ」として封入して欲しかったような気もしますね。

■反響への「喜びでいっぱい」

 投稿は記事執筆時点で「1.1万件」の「いいね」がついています。反響への感想も聞いてみました。

「『話題にだけでもなれば』との思いだったので、実際に話題になり素直に嬉しいです。『いいね』や『リポスト』が多かっただけでなく、『引用リポスト』という形でたくさんの方が数百件もコメントをしてくれていて、より具体的な感触が分かりました」

「バズりには否定的な意見もつきものですが、九分九厘が『素晴らしいアイデア』『近所でもやって欲しい』『この紙袋が欲しい』といった肯定的なお褒めの言葉だったので、やってよかったなと思いました」と鶴見さん。

実店舗での売れ行きについても、「ポストの翌週くらいに、想像以上のセット数が売れて、驚くとともにSNSの影響力を感じました。10冊セットがなかったらバラで買ってみようとはお客様が思わなかった可能性もあるので、新たな読者へ本を繋げることができたという喜びでいっぱいです」と感謝の思いを話しています。

■現場の書店員が選ぶ「間違いない10冊」、プレゼントにも

 実際に購入した人に紙袋を含めたこのセットをどんなふうに楽しんで欲しいかについて、鶴見さんは以下のように話してくれました。

「自分用にはもちろん、誰かへのプレゼントとしてもおすすめです。例えば入院生活をしている方へ…や、実家の両親に…など、自分で選書するのは大変だけど、誰かに本を贈ってみたい、という機会にお求め頂きたいです。本屋大賞の発表は4月9日ですが、ノミネート作品はその期間までに読み切らないといけないわけではもちろんなく、2026年、いやその先も、ゆっくりと時間をかけて10冊を味わってほしいです」。

 いずれ劣らぬ「現場の目利き」たちが選び抜いた10冊です。鶴見さんが「全国の書店員が自信を持って選んだ、どの作品も間違いなく面白く、多様なジャンルの最新文芸の詰め合わせです!」というように、今まであまり本を読んでこなかった、何から読めばいいか分からない、という人にもこの紙袋を通して読書の楽しみが広がっていくといいですね。

(まいどなニュース特約・山本 明)

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