公園の段ボールに遺棄された子猫が…生死の境にいた小さな命 「助けたい!」と手を差し伸べて11年、今は穏やかなシニア猫に

「今日は正宗の11歳の誕生日。380グラムで保護された時は生きられるか不安だったけど、たくましく、そしてふてぶてしいおじいちゃんになりました。これからも元気で20年は生きてね! 大好きよー」

キジトラ猫の男の子「正宗」くんに贈られたこのメッセージには、深い愛情があふれていました。その背景には、出会った当時、生死の境に立たされていた過去があります。その小さな命に駆け寄ったのは、Xユーザー・よしゅあさん(@chi_masa_suzu)。公園に置かれた段ボール箱のなかにいた正宗くんは、今にも息絶えてしまいそうだったといいます。

■運命を連れてきた1本の電話ーー小さな命との出会い

2014年8月初旬、飼い主さんのもとにある知らせが届きました。

「『猫を保護してるんだけど里親にならない?』と連絡を受けたんです。娘さんが公園で段ボール箱に入った子猫たちを見つけたと聞きました」

その公園には、これまでにもよく猫が捨てられていたといいます。段ボール箱のなかには、生後推定1カ月ほどの子猫が5、6匹、身を寄せ合っていました。

「子猫のなかでも激しく衰弱していたのが正宗でした。ふやかしたドライフードをなんとか食べている状態だったと聞いています」

今にも消え入りそうな正宗くんの状態を知った飼い主さんは「助けたい」という思いでいっぱいに。他の子猫は次々と引き取り手が決まるなか、迷わず正宗くんに手を差し伸べたのです。

■「生きられるだろうか」 小さな命と向き合う日々

お迎え初日、仕事を終えた飼い主さんは正宗くんを連れて動物病院へ向かいました。体重はわずか380グラム。栄養不良に陥っていることがわかったといいます。

「健康診断をしてもらっているあいだ、次々に看護師さんが集まって『かわいい~!』ともてはやしてくれました(笑)。先生からは『とにかくしっかり食べさせてください』と言われたのを覚えています」

家では、しばらくのあいだ3匹の先住猫とは隔離しなければならなかったため、正宗くんは飼い主さんの部屋で生活することに。心配のあまり、夜中に何度も起きて正宗くんがちゃんと息をしているか確かめました。

「正宗は、日中ほとんど眠っていて、お腹がすくと『ミィ』と鳴いてご飯を催促。食べ終えるとベッドによじ登ってまた眠る…そんな生活が2~3週間続きました。『どうか生きて』と祈るような気持ちでお世話をしていましたね」

手厚いケアのかいあって、正宗くんは少しずつ元気に。先住猫のなかで年齢が近い「ちた」ちゃんとはすぐに打ち解け、家庭はより一層にぎやかになりました。

「正宗は、勢いあまってよく脇腹からコテンと倒れていました。先住猫たちは『また新入りが来たな』と慣れた様子で見守っていましたね。正宗とちたがよく一緒に遊ぶようになって、家の雰囲気がぱっと明るくなったように思います」

そうして、飼い主さん家族の生活は正宗くん中心に一変しました。

「家族で正宗の食事管理を分担し、1日5~6回、ご飯を食べさせてしっかり栄養を摂ってもらえるようにしました。私も仕事を終えたら寄り道せず、まっすぐ帰宅。正宗を育てるために家族みんなで協力する日々を過ごすようになりました」

飼い主さん家族に愛情を注がれ、正宗くんはすくすくと成長。出会った頃のはかなげな様子から、生命力あふれるたくましい成猫になりました。

■11歳になった今ーー穏やかで愛おしい末っ子気質のおじいちゃんに

月日が流れ、正宗くんは11歳に。今ではのんびり過ごす時間が多くなったといいます。

「とても穏やかな子です。若いころは、先住猫にちょっかいを出したり、よく遊んだりしていましたが、ケンカをするようなことはありませんでした。年齢を重ねて、今は寝て過ごすことが多いです。ただ、甘やかしてしまったので、末っ子気質は今も変わりません」

出会ったころを振り返ると、その道のりは決して平坦ではありませんでした。でも、「11歳まで生きてくれてとても嬉しい」と飼い主さんは語ります。

「この長い年月のあいだには、膀胱炎になって心配したこともありましたが、それも乗り越えてここまで一緒に暮らしてこれたことに感謝しています。これからも、正宗らしく過ごしてほしいです」

飼い主さんは、毎年、正宗くんの誕生日に必ず伝えている言葉があるといいます。

「『あと20年は生きてねっ!』と。ずっとそう声をかけています」

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)

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