無責任な「餌やり」で猫が急増、ビルに住み着いてしまった36匹 避妊去勢手術のため保護団体が奔走「命を守る決断」の裏側
ビルに住み着いた野良猫たち36匹--。
その全頭を一斉に避妊去勢手術するという大規模な地域猫活動が、福島県北部で行われました。
この活動を中心となって支えたのは、地域の保護猫団体「にゃんとも」さん。しかし、その裏側には、野良猫の多頭化を招いた“無責任な餌やり”の問題、協力者不足、資金不足など、現場の過酷な現実がありました。
■発端は一人の「餌やりさん」から
約15年前、数匹の猫に餌をあげたことが始まりでした。「近隣の方々から『猫が増えて困る』と役所に苦情が入り、存在が発覚しました」とにゃんともさんは振り返ります。
ビルの階段には、決まった時間になると10匹以上の猫が集まっていたといいます。
「外猫とは思えないほど太っていて、どれだけ餌を与えられていたかが分かりました」
■保護団体の呼びかけにも応じず…膨れ続けた命
猫を保護したいと相談を受けた「にゃんとも」さんは、捕獲して避妊去勢手術を行い、元の場所に戻す“TNR活動”を提案しました。しかし、依頼主である餌やりさんは「慣れている猫を捕まえて」と言うばかりで、その後1年も連絡がないまま。その間に子猫は増え続けました。
「行政に助成金を求めるため署名を集め、ようやく町からの補助金を得ることができました。それでも資金は足りず、YouTubeでの発信などで20万円の支援金を集め、決死の一斉手術を決断しました」
■真冬の深夜に鼻水を凍らせて
捕獲は1月、深夜11時から早朝3時まで続きました。
「協力してくれた近隣の保護猫団体の皆さんには本当に感謝しています。依頼主さんは深夜に一度来ましたが、挨拶もなく、非常に残念でした」
捕獲した猫たちは町の体育館を借り、獣医師2名とボランティア25名で一斉手術に挑みました。
■それでも終わらない問題
一斉手術後、手術できなかった子猫は預かりボランティアが引き取り、新たな家族を探しています。しかし、残り32匹は元の場所にリリースするしかありませんでした。
さらに、当初は餌やりさんが金銭負担をする約束でしたが、行政の補助金が下りたことで支払いを拒否。「私たちの方で不足分20万円以上を自腹で負担しています」とにゃんともさんは話します。
■「餌をやるなら、最後まで責任を持って」
「外猫に餌をあげるなら、避妊去勢手術まで責任を持ってほしい。どうしても増やしてしまったなら、行政や地域の保護団体に必ず相談してほしいんです」とにゃんともさん。「飼えないからと置き去りにせず、飼い猫は完全室内飼いを徹底してほしい。ルールを守ることで猫の命を守れるのは人間だけです」
■不幸な命を繰り返さないために
今回の活動は、ボランティアたちの善意と行政の協力がなければ実現しませんでした。
「でも、同じことがまた繰り返されないように、地域の理解と一人一人の責任感が必要です」
にゃんともさんは、今後も地域猫と人間が共に生きられる街づくりを目指しています。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)





