夫婦が移住間もない沖縄で保護した”激やせ”の三毛猫 1年後、猫アレ夫のそばを離れない人懐っこい美猫に成長

 沖縄県うるま市在住のJさん夫婦は関西方面から移住した3カ月後に負傷した三毛猫を保護することになった。2020年7月のある日、夫婦は外出先からの帰り道、ふと立ち寄った公園で1匹の猫を見掛けた。

 前日は暴風雨で大荒れの天候だったが、この日は天気が良く「せっかくだから散歩でもしよう」となり、車を止めたのだ。すると公園に隣接した駐車場に1匹の猫がいるのが目に入った。毛繕いをしていたようだが、こちらに気が付いたのか離れて行くように歩き出した。

 遠目からでも、その姿はフラフラしているように見えた。気になって近づいてみると、見たことがない程やせ細って弱っており、尻尾はまるで紐のようだった。

 「これは…」

 衰弱しており、いまにも餓死しそうな雰囲気を感じた。顔を確認すると目には力がなく、生気のない、何とも言えない表情でこちらを見つめてきた。

 辺りを見渡すと食事を与えている様子ではあったが、仲間内で食い負けしているのか?それとも食事の頻度が足りていないのか?全く分からないが、とにかくすぐにでも栄養補給が必要な状態であることは一目瞭然。急いで近くのスーパーマーケットでキャットフードと水を用意し、現場へと戻った。

 逃げ出しているかもしれないと不安だったが、その三毛猫は移動しておらず、同じ場所で確認ができた。用意したキャットフードをトレーに移し、弱りきった猫に差し出した。はじめは少し逃げる素振りを見せたが、ご飯を置いて少し距離を取ると、すぐにフードを食べ始めてくれた。

 ご飯にはがっついているが、その姿から異変に気が付いた。常に頭を左右小刻みに揺らしているのだ。おそらく、こちらが思っている以上に、体が支えきれないくらいギリギリの状態で生きているのだろう。

 猫に食事を与えている間、奥さんは夫にこれからのことを相談した。弱っているこの子を放っておくことはできず、保護することを考えた。しかし、自宅には一緒に移住してきた保護猫が2匹いる。また夫の猫アレルギーもあり、これ以上自宅の猫を増やすことは難しい。ましてや、この地に引っ越してまだ間がないため、地域の信頼できる保護団体も知らなかった。問題は山積みだった。

 だが、一生懸命食べているこの子の姿を見ると「このやせ細って弱った体では、本格的な猛暑となるこれからの気候に耐えられないだろう」と思い、奥さんは保護する決意を伝え、夫も了承した。

 猫のキャリーバッグもなく、素手で抱えて保護を試みた。猫は弱っているため力がなく、あっさり保護ができた。そのまま車で病院へ連れて行くと、獣医師から「脱水症状も出てるし、ノミに血を吸われていて、とても危ない状態」と知らされた。体重は成猫にもかかわらず、わずか1.8キロ。人間に例えると27キロほどだ。骨と皮だけという状態にあらためて驚きを隠せなかった。

 実際に「はじめての看取りになるかも?」という不安がよぎった。しかし、ちょっとでも幸せを感じてもらえるように世話をしようという覚悟ができた。その一方で猫はメスでまだ若いということも分かった。

 うるま農場という公園で保護したことから「うる」という言葉に愛嬌をのせて「うーたー」と名付けた。状態が悪かった分、元気になったと感じるまで時間がかかったが、少しずつ体重が増え、立つ足にも力が入るようになった。

 2カ月ほど経ったころだろうか。ようやく毛が生え変わり始め、小さいながらも鳴き声が出るように。本来のうーたーの身体に戻っているのだと嬉しい気持ちになった。ずっと無反応だったおもちゃで初めて遊んだ時には、心が通い合えたような気がして感動で涙が出た。「うーたー本当によく頑張った」と夫婦で声を掛けた。

 順調に成長していくうーたーに家族を探すことも考えたが、そのころになると、もうすでに離れられないほどの情が湧いており、我が家の家族として迎え入れることに。その後、無事に2匹の先住猫にも受け入れられた。

 あれから1年。

 うーたーはすっかり体が回復し、熱烈な愛情表現をするかわいい猫に成長した。特に猫アレルギーの夫のことが大好きで、顔を舐めたり、甘えたい時にする仕草のふみふみマッサージをしたり、主人の仕事をすぐ横で見守ったりといつもべったり離れない。夫は「またうーたーに舐められたぁ」とにやけながら、舐められた部分を洗い流すのが日課となっている。

 2匹の先住猫とは…どうなったか。お兄ちゃん猫の世話をするのが大好きなうーたー。入念に耳掃除をしてあげたり、お兄ちゃん猫のトイレの後を追いかけ、排泄物を丁寧に隠してあげる世話焼きさんに。ただ、お姉ちゃん猫には対抗心があるらしく、いつもちょっかいをかけてはお姉ちゃん猫に怒られている。かなり女の子の面が強いことも分かった。

 Jさんの奥さんは「うーたーの保護は、命の可能性と尊さを学ぶ大きな経験になりました。あんなに細くて紐のような尻尾が今は3匹の中で一番太い立派な尻尾になりました。成長した尻尾の太さは、うーたーが辛い時期を耐え抜いて、一生懸命生きている勲章だと思っています」と話します。

 うーたーは沖縄の空の下、Jさんご夫婦と先住猫たちと幸せに暮らしている。

(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)

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