病院の駐車場に捨て猫がいると相談を受け…「知らない顔はできない」と電車とタクシー乗り継ぎ保護

大阪府に住む児玉さんは、「猫が捨てられている、どうしよう」という相談を、夫を介して受けた。できたら発見した本人に保護してほしかったが、自分では保護できないという。話を聞いたからには放っておけず、児玉さんは電車とタクシーを乗り継いで現場に向かった。

■聞いてしまったからには知らん顔できない

2004年6月1日、大阪府に住む児玉さんの夫は、知人から「猫が捨てられている、どうしよう」と、電話で相談を受けた。電話の主は、児玉さんが数匹の保護猫を飼っていることを知っていた。

病院の駐車場に捨てられていたという。夫は電話で児玉さんに事情を説明した。児玉さんもすべての猫を受け入れられるわけではない。

「ボランティアは手一杯の人が多いので、本当はできることなら見つけた人がお世話してほしいんです。でないと、ボランティアがパンクしてしまうんです」

知人は夫に言えばなんとかしれくれると思ったようだった。「その人が自分で保護できないの?」と聞いたが、できないようだった。

「(話を)聞くだけ聞いて放っておけるわけないやん!猫嫌いの人や病院の人に見つかって、保健所に連れて行かれたら終わりやん!」。そう思った児玉さんは、急遽、猫を保護するために家を出た。

■ダンボール箱に入れられた子猫

猫は保健所に収容されたら、ほぼ間違いなく殺処分される。特に、子猫が次から次へと持ち込まれるような時期だと、処分になる可能性が高い。

「当時は、持ち込まれたら殺処分されるのが普通でした。体調の悪い猫や里親が見つかる可能性が低い猫も処分の対象になります」

児玉さんは、「保健所に連れて行かれたら、誰かにいじめられたら、自分で逃げてしまったら」と思うと気が気ではなかった。万が一姿がない場合には、最寄りの保健所に電話するつもりだったという。

車の運転ができなかったので、電車とタクシーを乗り継いで1時間半。現場に着くと、ダンボール箱があった。中をのぞくと1匹の子猫がいた。衰弱はしておらず、元気だった。

■病院に行くべきか、家で見守るべきか

名前はテンくんにした。今年で16歳になったが、おじいさんという感じではないが、階段を上る時は、ゆっくりゆっくり上るようになった。

ある日、午前4時頃、テンくんが3階の部屋にいる時、バタバタという音がした。誰が走り回っているんだろうと見に行くと、テンくんがくるくる回っていた。足腰のふんばりが効かないようだった。平衡感覚がなくなっているようで視線が定まらない。2階に連れてきて落ち着かせようとしたがよたよた歩きまわった。5分もすると部屋の隅に入り込み、だんだん症状が治まった。

児玉さんは、以前飼っていたゆうちゃんという猫がけいれん発作を起こして倒れた時、慌てて動物病院に連れて行ったことがある。しかし、ゆうちゃんは病院へ向かう車の中で亡くなった。そうした経験があるし、猫は病院に行くことがストレスになるので、テンくんを病院に連れて行かなかったという。テンくんは同じような発作を何度か起こしたが、症状からして、もしかしたら特発性前庭疾患かもしれない。「だとしたら2~3週間ほどで完治する可能性もある」。そう考えた児玉さんは、しばらく様子をみることにした。それから約1カ月、今ではすっかり症状も治まり元気に暮らしている。

10数匹猫を飼ってきた経験から、てんかん発作ではないと思った。動物病院にどのタイミングで病院に行くべきか、行かずに様子を見るべきなのか。連れて行くと最高の医療を受けられるが、時に過剰な医療を受けさせることになる。児玉さんのように経験が豊富でも、迷うことがあるそうだ。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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