コロナ用語の「次亜塩素酸」オノマトペでは分からない漢字の素晴らしさ 京大教授が語る

 「科学よもやま話=15=」

 もふもふは正義。これでニヤっとした人はラノベの異世界もの読み過ぎです。日本語が乱れてますね。という話をしたい訳ではなく、この“もふもふ”のような擬態語を「オノマトペ」というらしい。先日、テレビで聞いて、初めて知ったわと、奥さんに伝えたら呆れられました。常識らしいです。

 国語の授業で出てたらしい。いや、この51年聞いたことがないからね。調べました。英語の擬音語を意味する「onomatopoeia」が由来で、これをカタカナにしたようです。擬音語、擬態語でいいやんと思うのは僕だけでしょうか。やはり、漢字を当ててもらわないとピンと来ないし、頭に入ってこないですね。

 ようやくコロナの収束が見えてきましたが、まだまだ予断を許さない感じです。コロナの殺菌には次亜塩素酸が効くというニュースがありました。次亜塩素酸は酸化力が大きいので、コロナに効くかどうかはよく分かりませんが、殺菌能力は高いです。

 さて、次亜塩素酸とありますが、『次』、『亜』が気にならないでしょうか?この漢字を当てた人は素晴らしいですよ。『亜』も『次』、つまり2番目という意味があるので、次亜は、次の次になりますね。

 塩酸、硫酸は聞いたことがあると思いますが、塩素酸という『酸』があります。これは、「塩素」と「酸素」と「水素」から出来ているもので、塩素一つに対して酸素が三つ結合しています。これに水素で、HClO3という化学式になるのですが、これはおいといて。この塩素酸から一つ「酸素」を増やすと、過塩素酸、一つ減らすと、亜塩素酸、もう一つ減らして、次亜塩素酸です。

 なので、次亜塩素酸は塩素と酸素と水素が一つずつから出来ているものなんですね。ここから酸素を取ると、塩酸になります。これですよ。この漢字の素晴らしさ。漢字を見るだけで、なんとなくどのような物質から出来ているか分かりますよね。オノマトペでは分からないんです。

 ちなみに、「塩素」。これは『しお』の『素(もと)』ですよね。この漢字をあてた江戸時代の宇田川榕菴先生のセンスは抜群です。『塩(しお)』は塩素とナトリウムから出来ているので、確かに「塩の素」です。

 さて、オゾンガスもコロナの殺菌に使用されています。オゾンも酸化力が非常に高いです。オゾンは酸素三つから出来ているものですが、どんな漢字をあてているのか調べました。「三酸素」です。そのままやん。面白くなかったですね。酸化の対となる語が、「還元」です。これは元に戻るんですよ。酸化鉄から酸素を取って、元に戻して鉄を作るのが還元です。

 繰り返しますが、漢字わかりやすいです。オノマトペでは分からないんです…という言い訳をしたいために、つらつらと化学に関連する漢字の話を書いてしまいました。さて、電池です。これは「電気」が「溜まっている」ですね。もう良いですか。最後に、電池では「酸化力の大きいものと還元力の大きいものが正義」となります。この話はまたどこかで。

 ◆安部武志(あべ・たけし)2009年、40歳で京都大学工学部研究科教授に就任。電池技術委員会賞、炭素材料学会学術賞などを受賞。京大工学部卒、大阪府出身、51歳。趣味はゴルフ。

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス