巣鴨駅で無料配布の「切符の芯」とは何か?SNSで話題も在庫切れ…他駅では構内で有効活用

きっぷの芯配布を知らせるポスター(ssk @ssk93502さん提供)
これが切符の芯。縁の幅は1センチほどだが硬くて頑強。簡単にはつぶせない
2枚

 Suica(2001年導入)やICOCA(03年導入)などICカード乗車券が普及した21世紀の日本では、日常的な路線での切符の需要が減少傾向にある。だが、どっこい、電車の切符は生きている。そう実感したのは、都内のJR巣鴨駅で希望者に無料配布されている「切符の芯」というものを知ったからだ。SNSでの反響を踏まえ、投稿者やJR東日本東京支社に話を聞いた。

 ssk@ssk93502さんによる1月10日のツイートが大反響を呼んだ。「JR巣鴨駅ではきっぷの芯をお配りしています。ご希望の方は改札口の駅係員までお問い合わせください」というポスターとガムテープの芯のような物体の画像が次の文面と共にアップされたのだ。

 「JR巣鴨駅に不思議な掲示。『切符の芯』を希望者にくれるらしい。サッパリ判らないので、貰ってみた。 ガムテープの芯的な直径14・5cmの品で、頑丈!切符の紙が巻き付いたロールが、自販機に入ってるそう。 配布ニーズがあるのか駅員さんに訊いたら、判らないから配布案内出してみたんだって」。この投稿に対し、22日朝までに1・3万件のリツイート、2・3万件の「いいね」が付いた。

 SSKさんは「ポスターデザインも遊び心に溢れていたので、軽い気持ちで入手&ツイートしたのですが、リツイート数に驚きました」と当サイトに明かした。記者は16日に巣鴨駅に足を運んだが、同駅によると「40~50個ほど用意していた」という芯は既に在庫切れ。ポスターも撤去されていた。SSKさんは「14日に前を通った時にはまだポスターはあったのですが…。もし在庫がなくなるほど希望者がいたなら、何よりです!」。SNSを確認すると、15日の時点で「品切れ」だったという投稿を見つけた。

 JR東日本東京支社の広報担当者は当サイトの取材に対し、「巣鴨駅で配布されたのは19年7月からです」と説明。実は半年前から配られており、その発想のきっかけは「夏休みの自由研究などでの有効活用」だったという。現時点で、同社管内で芯の配布を行っている駅は巣鴨駅だけ。他の駅では「基本的には処分している」という。

 しかし、記者はJR日暮里駅で「切符の芯」が実際に活躍している姿を発見した。芯を2つ重ねて黄色いガムテープで固定。これで高さ11・5センチの筒となり、直径14・5センチの穴に封筒入りの配布物が何部か差し込まれていた。紙をぎゅっと凝縮した縁(ふち)の幅は1センチだが、非常に硬い。計3個が構内の卓上に置かれていた。今までなら素通りする光景だが、今回、芯の存在を知ったことで「こんな形で活(い)かされているんだ」と実感できた。

 今後、巣鴨駅では使用済みの芯が溜まった段階で配布を再開する予定という。告知まではしないが、駅でポスターを目にすれば声掛けして手にできる。

 SSKさんに1つだけ持ち帰ったという芯の使い道を尋ねた。「皆さんの活用画像や、駅での活用目撃談を参考にしつつ、芯の用途は考え中です」。そして「今まで自販機の中に思いを馳せた事がなかったので、駅員さんが手動で大きなロールを管理されてるのかぁと、親しみを感じるようになりました」という。

 記者も感化されて巣鴨駅で切符を久々に購入。その瞬間、券売機の中でロールが微かに動くさまを想像した。それまで考えもしなかったことを考えるということ。そんな「気づき」を与えてくれた同駅の取り組みは、将来的に「絶滅危惧種」にもなりかねない「切符」という存在を見つめ直す機会を与えてくれた。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)

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