確定申告まもなくスタート!今年こそ節税…まずは「医療費控除」からチャレンジ

節税のため今年こそ挑戦したい確定申告(fpdress/stock.adobe.com)
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 まもなく確定申告のシーズンです。節税のために一度は申告してみたい!と思いながら、難しそうな印象をお持ちの方も多いと思います。そんなときは「医療費控除」からチャレンジしてみませんか?一定額以上の医療費を年間で支払ったときに、納めた税金の一部が戻ってくる制度で、2017年からは一部医薬品を購入した金額が一定額を超えたときに活用できる特例「セルフメディケーション税制」も始まりました。一方、確定申告の内容によっては損をすることもあるといいます。控除のかしこい活用法について、大阪市にある佐田会計事務所の税理士・佐田哲司さんに聞きました。

  ◇   ◇

■1年間に支払った医療費を「医療費控除」で申告

 医療費控除とは、1月1日から12月31日の1年間に支払った医療費の一部を、税金の対象となる所得金額からマイナスできる制度のことです。支払った医療費に応じて税金を計算しなおし、会社員であれば給与から天引きされていた所得税の一部が戻ってきたり、翌年の住民税負担が軽くなったりします。

 医療費は、生計を同一とする親族のために支払った医療費であれば、全員分まとめることができます。同居していなくても大丈夫なので、遠くで下宿している子どもさんや単身赴任中の方の分も、頑張って計算してみましょう。一方、同じ家計で暮らしていたとしても、お友達の分は計算できないので、注意が必要です。

 支払った医療費のうち10万円を引いた額が、上限200万円まで控除される金額となります。なお、総所得額が200万円未満の方は、10万円のかわりに所得の5%を引いた額になります。所得が100万円の人でも、天引きされた所得税があり、かつ5万円以上の医療費を支払っていれば対象になるので、最初からあきらめたりせずに普段から病院の領収書などを集めておきましょう。

■医療費に含められるものは意外に多い 

 控除のために計算する医療費には、治療を目的にした経費も算入することができます。たとえば、医療機関への通院・入院するための交通費のうち、公共交通機関を使った場合は対象にできます。しかし、自力で病院まで向かった際の自家用車のガソリン代や駐車場代は、含めることができません。

 薬代は医師の処方箋をもとに購入したものだけでなく、市販の薬も病気を治すために購入したものであればすべて対象になります。風邪薬や頭痛薬はもちろん、絆創膏や薬用のど飴でも大丈夫です。ただし、ビタミン剤やサプリなど、健康増進や病気の予防を目的としたものは含めることができません。

 なお、申告できる医療費はあくまでも「自己負担した金額」のみです。生命保険の入院給付金や、健康保険で支払われた高額療養費、出産育児一時金など、もらったお金があれば、医療費からはマイナスしなければなりません。もらうタイミングがずれて確定申告のときに正確な数字がわからない場合は、見込額で計算してもかまいません(見込額と確定額との差額は後日訂正が必要です)。

■OTC医薬品の購入費を申告できる「セルフメディケーション税制」

 家族全員が比較的健康で、お医者さんに診てもらう機会が少ないという方の中には、医療費がなかなか10万円を超えない場合もあります。そんなときに検討したいのが、新たにできた「セルフメディケーション税制」です。健康の保持増進および疾病の予防への「一定の取り組み」をしている人に適用されるもので、ドラッグストアなどで売られている「OTC医薬品」の購入代金が1万2000円を超えた場合、最大8万8000円分まで控除をすることができます。

 OTC医薬品は、医師の処方箋がなくても薬局やドラッグストアで購入できる、医療用医薬品から転用された成分を含む薬です。薬品のパッケージにマークが表示されているものが多いです。また、購入時にもらうレシートにも、特別な記載がされます。わからないときは店頭で確認するとよいでしょう。また申告時には「一定の取り組み」の証明として、健康診断領収書もしくは結果通知書、インフルエンザの予防接種の領収書などが必要となります。

■どちらを選択するか、申告前には試算を

 医療費控除の特例というかたちでスタートしたこの制度、特定の種類の薬代のみで計算する難しさもあり、実はあまり普及しているとはいえません。OTC医薬品の購入金額は医療費控除の対象でもあるため、間口が広い医療費控除でまとめたほうが下限の金額をクリアしやすいこともあります。

 なお、セルフメディケーション税制と医療費控除は併用ができず、どちらを適用するか選択する必要があります。そのため、医療費を10万円以上支払い、かつOTC医薬品の購入額が1万2000円を超えた場合は、どちらが有利になるか計算する必要があります。

■医療費控除をきっかけに、追加納付をすることも

 なお、医療費控除を受けるために確定申告をするのであれば、ほかのお金の動きもあわせて申告する必要が出てきます。

 たとえば、20万円以下の給与所得・退職所得以外の所得は、確定申告の手続きが免除されていますが、医療費控除で確定申告をするのであれば、20万円以下の所得も申告しなければなりません。そのため、医療費控除よりもほかの所得を申告したことによる影響のほうが大きくなり、追加納付をするケースもありますので注意が必要です。

 ふるさと納税をしている方で、確定申告しなくてもすむように「ワンストップ特例制度」を活用していた場合でも、医療費控除を受けるために確定申告をすると、特例制度が使えなくなります。確定申告の中で寄付金控除をあらためて申告する必要が出てきますので、気をつけましょう。(税理士・佐田哲司)

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 2019年の確定申告は2月18日から3月15日までです。ただし、会社員などで天引きされて納めすぎた税金を戻してもらうように手続きする「還付申告」なら、確定申告の期限後でも行うことができます。たとえば、医療費控除のみ申告する場合、申告年の翌年から5年間申告することが可能です。

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