そもそも「恵方」って何?賛否両論の「恵方巻き」シーズンが今年も到来
今年もまた、この季節がやってくる。節分の日、その年の恵方(えほう)の方角に向かって、太巻きを食べると縁起が良いとされる「恵方巻き」。ちなみに2019年の恵方は東北東だが、そもそも「恵方」とは何なのか?
昔から、節分の日に恵方に向かって太巻きを食べれば、全ての物事が「吉」になると信じられてきた。これが「恵方巻き」の始まりだという説が有力だ。その年の「歳徳神」(としとくじん)のいる方位を「恵方」、または「明の方」(あけのがた)という。なお、食べるときは無言で、切っていない太巻き1本を一気に食べ切らなければならないとされる。
もともとこうした風習は、関西の南の商家や、料亭などで行われていた。これを全国的に広めていったのは、ご存知の通り全国のコンビニエンストアやスーパーなど。新しいタイプの恵方巻きを続々と開発し、ブームに火をつけていったのは記憶に新しい。
昨今の「恵方巻き商戦」はすさまじく、過剰生産による廃棄処分も目立つようになった。このため今年1月には、農水省が全国のコンビニやスーパーなどの業界団体に対し、恵方巻きの需要に見合う販売をするよう文書で通達。ニュースで目にした方も多いのではないだろうか。
とはいえコンビニの恵方巻き商戦は今年も激化、その商品構成も多様化している。一例をあげれば「ローソン」は高級料亭「なだ万」と提携。音羽山清水寺で厄除開運祈祷された海苔を使用した同店監修の「恵方巻き 舞」「海鮮恵方巻 華」の2品を販売する。他にも「リラックマ恵方巻」「神戸牛たっぷり恵方巻」などバラエティ豊かだ。
ライバルの「ファミリーマート」も「サラダ恵方巻」「アンガス牛焼肉恵方巻」「上海鮮恵方巻」「ヒレカツ恵方巻」など多彩な展開。他社も独自の新商品で店頭を賑わわせており、消費者としては何を選べば良いのか困るほどだ。
一方デパートの恵方巻き商戦も激化している。「伊勢丹」では、ほぼ全てのお総菜の店が恵方巻きの注文を受け付け。中でも料亭「東京吉兆」の恵方巻きは一段と高級化したといい、今年は「これまでの定番具材にからすみなどを加える差別化を図っていく」(吉兆伊勢丹店)としており、高級化や差別化は進みそう。ちなみに大量廃棄問題については「当店では、注文の数しか作らなくしているので、廃棄する恵方巻きはない」(亀戸升本)とのことだ。
この恵方巻き。一般的な具材として使われるのは、卵焼き、椎茸煮、かんぴょう煮、穴子、高野豆腐、おぼろ、キュウリなどとされているが、最近の傾向として、あまりこだわらず、その店独特の具材を使った個性的なものが多いのが特徴と言える。伝統的なイベントも、商業的な思惑が入ると本来の趣旨から遠く離れる気もするが…。来年以降の「恵方巻き」がどう変わっていくのか-ちょっと早いが気になるところだ。(デイリースポーツ特約記者・二階堂ケン)