イチローも通った神戸のお好み焼き店 再開発にも負けずに営業中 “名物”も健在

神戸のお好み焼き店「ひかり」名物の「海苔巻焼き」。テイクアウトもできる
イチローとのツーショットを手にする初代店主の故・小林あや子さん(2004年撮影)。この写真は今も店内に飾られている
お好み焼き店「ひかり」の暖簾。終戦の年から昭和、平成を経て新元号を迎える=神戸市内
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 米大リーグで45歳シーズンに挑むマリナーズのイチロー外野手がオリックス在籍時代に常連だった神戸市兵庫区のお好み焼き店「ひかり」。昨年までに周囲の市場が再開発によってほぼ解体されてしまった後も営業を続けている。お好み焼きを海苔でクルリと巻いて巻き寿司の形状にカットした名物の「海苔巻焼き」(税込500円)は全国ネットのテレビでも紹介され、神戸の下町グルメとして注目されている。

 イチローはオリックスの本拠地だった神戸で1992年から2000年まで過ごした。同時期に神戸在住だった記者も繁華街である三宮あたりの店で遭遇する機会はあったが、守備範囲の広い彼はJR神戸駅から南西に徒歩10分ほどの場所にあったアーケード商店街「稲荷市場」の一角にある同店にも通った。

 「ひかり」は昭和20(1945)年創業。「ビリケン」を祭った松尾稲荷神社の敷地となる一角の小売市場「稲荷市場南栄会」で営む。初代の店主・小林あや子さんが若き日のイチローと撮ったツーショットは今も店内で、同じく常連だったダイエー創業者の中内功氏の写真と並んで額縁に入れられて大切に飾られている。

 あや子さんは07年に死去。現在は2代目の曽我部さと子さん、3代目の園部周(ちか)子さんの2人で店を切り盛りしている。ともにベレー帽をかぶる。母である2代目が赤なのに対し、3代目は白。紅白競演?周子さんは「私のは油よけですから」と笑った。

 海苔巻焼きを卵入り(税込550円)で注文した。さと子さんが焼いたお好み焼きを、周子さんが鉄板に置いた海苔に乗せ、コテでクルリと巻いて寿司の海苔巻きと同じ大きさに切る連係プレーだ。

 さと子さんから「これがお勧め」と差し出された泥ソースをかけた。ピリッとした辛さと鼻に抜ける海苔の香りを楽しみ、神戸ならではのドリンク「アップル」(という名称の黄色いミカン水)の甘さで中和させながら胃袋に流し込んだ。

 創業74年の歴史において、海苔巻きはいつ頃から出しているのか。周子さんは「昭和25年から30年の間くらいと聞いています」と説明。60年以上になる。

 海苔巻きだけでなく、メニューは豊富。「タコ、イカ、豚肉などが入ったチャンポンそば、すじ焼きなども人気です」。周子さんは鮮やかな手つきでコテを動かす。「やれるところまでやります」。終戦の年に誕生し、戦後の昭和、平成を経て、新たな時代まで暖簾(のれん)を守る。

 (デイリースポーツ・北村泰介)

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