「天皇杯・決勝、町田3-1神戸」(22日、国立競技場)
決勝が行われ、町田が神戸に3-1で勝ち、初優勝を果たした。前半にFW藤尾翔太(24)が、GKと競り合いながらクロスを押し込んで先制。さらにFW相馬勇紀(28)が加点し、後半には藤尾のミドルシュートで突き放した。神戸の反撃を1点に抑え、J1昇格2季目で初の国内主要タイトルを獲得した。黒田剛監督(55)は就任3年目での栄冠に目を潤ませた。
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試合終了の笛が鳴った瞬間、黒田監督は反り返るように両手を掲げてガッツポーズした。笑顔でコーチ陣と円陣を組み喜びを分かち合うと、もみくちゃに。その後、目には光るものがあった。
「高校サッカーで何度もタイトルを取らせてもらって、プロとして3年目。すごく自分の中で不安や恐怖を覚え、今年1年もがき苦しむ時期もあった。そういったものが今日の勝利によって報われた。皆さんへの心からの感謝も含めて、涙となって出てきた」
約30年間、青森山田高を率い、全国高校選手権では3度の優勝に導いた名将。23年からプロに舞台を移し、1年目でJ2優勝を成し遂げると、2年目もJ1初挑戦のクラブとしては歴代最高位となる3位に導き、Jリーグを席巻した。
ただ、3年目の今季、“負け知らず”の指揮官に試練が待っていた。4月6日に一度首位に立つも、以降の7試合で1勝1分け5敗と急失速。同時期に自身のパワハラ疑惑が報じられ、キャリア初の3連敗を喫した。「心の整理がつかず、常に不安だった。恐怖すら覚えた」。負け慣れていない人間にとって、3連敗は耐え難いものだった。
さらに追い打ちをかけるかのように、17年もの間、ともに暮らしてきた愛犬が亡くなった。「最後、口も動いてたんだけど…朝まで起きててくれて。俺が抱っこして、10分後くらいに息を引き取った」。涙は止まらない。サッカーのことを考えると息苦しくなった。どん底でショックは大きく、3連敗となった翌日は定例取材に初めて応じられなかった。
それでも「選手たちの上に立つ男・監督として、引きずってはいられない」と無理やりにでも立ち上がった。「『あの時は相当悪かったね』って後から笑って言えるように」。言葉通り、ぶれずに歩み続けた闘将。苦しんだ先の栄冠だった。