ドイツ・デュッセルドルフの自宅からオンラインでの就任会見に臨んだ新監督のネクタイは、鮮やかな紫色だった。
「クラブからのプレゼントですか?」と聞くと、ミヒャエル・スキッベは満面の笑みを浮かべて「そうなんだよ。実は他にも、例えばマフラーとかも贈ってもらった。自宅は既にサンフレッチェカラーで染まっているよ」と嬉しそうに語った。
かつてドイツ代表の戦術担当として2002年ワールドカップで準優勝を果たし、ボルシア・ドルトムントのユースを率いて訪れたこともある日本で、新しい冒険を始める。その現実を前にして、チャンピオンズリーグやワールドカップ欧州予選を戦った実績を持つスキッベ監督も、高揚感を隠せなかった。
さまざまなことを語ってくれた記者会見だったが、特に注目するべきは、彼がやろうとするサッカーだ。
もちろん限られた記者会見の時間の中で、戦術の具体性を語ることは難しい。ただ、彼は会見で1つのヒントを残している。
「重要なのは(攻守の)切り替えだ。選手同士がお互いに近い距離に立ち、できるだけ相手にボールを持たせないようにして奪い返し、そのまま素早く攻撃に移りたいと考えている」
この言葉から類推する彼の方向性は、即時奪回だ。川崎が得意とする戦術であり、ヨーロッパではもはや基準。ボールを失った瞬間に奪い返せばカウンターのチャンスも広がり、相手陣内でずっとサッカーができる。
もちろん、簡単ではない。前線の守備意識、ボールを奪った後のパスワーク、攻守にわたる連動性も必要。だが、広島の選手たちの映像を確認した新監督は、「現有戦力で戦える」と足立修強化本部長には伝えており、大きくチーム構成を変えることはないようだ。
「できるだけ早く来日し、日本語も覚えたい」と意欲を見せるスキッベ監督。当初はリモートでの対応になる可能性もあるが、限られた環境下でどんな指導を見せてくれるのか。本当に楽しみだ。
(紫熊倶楽部・中野和也)
◆ミヒャエル・スキッベ 1965年8月4日生まれ。ドイツ出身。82年からシャルケ(ドイツ)で3年間プレーした後、87年に指導者に転身。00年にドイツ代表コーチに」就任し、02年日韓W杯では準優勝に貢献。15~18年はギリシャ代表を指揮した。今春まではアル・アイン(サウジアラビア)で監督を務めていた。