サッカー日本代表FW鈴木武蔵「自分はそのままでいい」 自著「ムサシと武蔵」を出版

 ベルギー1部ベールスホットに所属する日本代表FW鈴木武蔵(27)が22日、デイリースポーツのオンラインインタビューに応じた。3月1日に自著「ムサシと武蔵」(徳間書店、税込1650円)を出版する。ジャマイカ人の父と日本人の母の間に生まれ、6歳でジャマイカから日本に移住した。いじめや差別を受けたことで自己否定するようになりながらも、サッカーを通じて自分を受け入れ、成長していった半生を綴った。自著を通じて伝えたい思いをとは-。

 -「ムサシと武蔵」の出版を決意した理由は。

 「選手としてまだ若く『何も成し遂げていないのに本を出すのはどうかな』と最初は思いましたが、自分が経験してきたことや伝えたいことを、自分と同じような境遇の子供たちをはじめ、いろんな人に届けたいと思いました」

 -アスリートの成功物語ではなく、自己肯定の物語となっている。

 「まだ選手として成功しているとは思っていない。単なるスポーツ選手の自伝にはしたくなかったというのはすごくありました。(普段の生活で)なかなか成果が出なくてネガティブになってしまったり、自分の特徴かもしれないところを否定し続けたり、そういった気持ちはいろんな人に当てはまると思い、この本を書きました」

 -感情を押し殺して生きてきた自分を変えるきっかけとなった奥様とのやり取りは印象的。

 -「妻は大きな存在でもあります。人間一人では形成してきた人格を変えるのは難しいし(自分の)殻を破るのはほぼ不可能だと思います。周りの人が何度も自分の心に踏み込んでこようとして、それを何度もはねのけて、ようやく本当の自分をさらけ出して語れるというのは、自分にとってものすごく大きな成長だと思います。全部さらけ出さないと(思いは)伝わらないと思いますし、常に信じてついてきてくれた奥さんには本当に感謝しています」

 -日本では多様性が議論となることもある。多くの人種がいるベルギーに渡って感じることは。

 「黒人や白人、モロッコ人やトルコ人とベルギーには本当にたくさんの人種がいますが、みんなそういう環境に慣れていると感じる。ベルギーでも差別はあると聞きますが、欧州はいろんな国が近くにある状況で、環境という部分が大きく左右しているのではと思う部分もあります。日本は島国で、欧州に比べて外国人と触れ合う環境は少なかったと思いますが、日本もこれからどんどん外国人の方も来るようになって環境も変わっていくのではないかと思います」

 -今季は公式戦24試合6得点。出場数を確保しているがゴールから遠ざかっている。

 「今は点を取れていない時期ですけど、成長の前段階では必ず沈む時期があるので、僕の成長にとって必要不可欠な時期だと思っています。全く悲観的に考えていない。メンタル的に厳しかった時期もありましたが、踏ん張って乗り越えた者にしか見えない景色があると自分の中で確信している。この先ゴールを取れる自信も、活躍できる自信もあります」

 -自著を通じて伝えたいことは。

 「人種などに限らず(自分を)否定し続けている人間はたくさんいると思いますし、ネガティブになってしまい『自分のこんなところが嫌だ』と思ったりするのは誰しもあると思います。絶対に変えられない自分の特徴というのは受け入れ、その上で生きていかなければいけない。それは僕のような黒人とのハーフだからだけではなく、他の人にも当てはまることだと思っていて、そういう(自分を否定している)人たちにもこの本を届けたい。自分はそのままでいいですし、自分の色というのを忘れずに人生を生きてほしい。僕と同じ境遇の子供たちに届けたい思いもありますが、それ以外の人にも、たくさんの人に届けたいと思います。最初は僕が幼少期に経験してきたこと(差別やいじめ)が書いてありますが、重い感じではなく、それを疑似体験して本に入り込んで楽しみながら読んでもらえたら嬉しいです」

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