西野監督、ハリル前監督と真逆会見 ポジション表記を「外して」
5月30日のキリンチャレンジ杯・ガーナ戦に臨むサッカー日本代表メンバー27人が18日、発表され、西野朗監督が都内で会見を開いた。バヒド・ハリルホジッチ前監督が、サイド、中央、守備的MF、攻撃的MFと細かくポジション分けをしてメンバーを発表していたのとは対照的に、GK、DF、MF、FWとポジション分けされたメンバーリストを目に「差し替えられるならば、GK以外のポジションは外して欲しい」と漏らすほど、特定のポジション・役割に選手を固定することを嫌った。
本大会のメンバーは23人。GKを3人登録することを考えると、フィールドプレーヤー10人に1人ずつ控えを置くことが“数字の上では”できる。この意識が強かったのがハリルホジッチ監督で、おおむね4-2-3-1、あるいは4-3-3のポジション分けで各ポジション2人ずつ招集し、その時の課題に応じて許されれば23人を超える選手を集める、という手法がよく見られた。発表会見でも細かく各ポジションごとに、なぜその選手を選んだのか、このポジションの課題は何か、という点を熱く語っていた。「デュエル」と表現した1対1の競り合いも、基本的に球際、局地戦で負けなければ試合を優位に進められる、という発想から重視していた。
一方の西野監督は「ポリバレント」であることを、選考の指針としていた。たとえば前線の選手である中島翔哉(ポルティモネンセ)を「ポリバレントでは彼は1年間、なかったですね」と評してリストから外した。元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が用いて、日本サッカー界ではブームになったが、単純に複数のポジションができるというよりも、複数の“役割”をこなせるという意味が、より当てはまる。たとえば、守備的MFで先発出場していても、試合展開に応じてプレースタイルを変えたり、攻撃と守備の割合に変化をつけられたり。もちろん、単純にポジションを変えるということも含めて、多彩な戦術要求に応えられる選手ということが「ポリバレントな選手」にあたる。
手術を受けることを理由に泣く泣く今野泰幸(G大阪)の招集を断念したが今野はセンターバック、サイドバック、守備的MFとポジションだけでも複数こなせる。ゴールにも絡める能力の持ち主で「ポリバレント」な選手が欲しい西野監督にも合致するだけに、痛恨の事態だろう。
W杯初戦のコロンビア戦まで約1カ月となった。前回大会で1-4と大敗した強豪への対策を問われても「なかなか正直、絵が描けない」とも打ち明けた。「ただ、コロンビア戦に勝ちに行くというシナリオは、選手の組み合わせ、掛け合わせでいろいろ描けるものを選んで、ベストな選択をしていきたい」と、選手のコンディションを吟味して、最善の手をとりたいという思いをのぞかせた。急きょ代表監督に就任し、少しでも考える時間がほしい、そのために戦術に幅を持たせるため「ポリバレント」をキーワードにした選手選考であるようにも見える。
この点も入念に対戦国の対策を練ったと豪語していたハリルホジッチ前監督と対照的だ。戦術に合わせて選手を選ぶのか、選手に合わせてチームをつくるのか。アプローチは異なれど、結果が求められるのは同じだ。