相次ぐボクサー死亡事故受け自前の救急車購入、過度な減量抑制など多岐な対策検討 JBCとプロ協会が緊急会合、セレス小林会長「考えられることはやる」

 JBCとの緊急会合後、会見した日本プロボクシング協会の小林昭司会長
 相次ぐ事故を受け、緊急会合を行った(左から)JBCの安河内剛事務局長、日本プロボクシング協会の加山利治事務局長、小林昭司会長
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 今月2日に東京・後楽園ホールで行われたプロボクシング興行に出場した2選手が相次いで急性硬膜下血腫で死去したことを受け、日本ボクシングコミッション(JBC)と各ジム会長から構成される日本プロボクシング協会が12日、都内で緊急会合を行った。再発防止に向けて、自前の救急車の配備や医療機関との連携、プロテスト時や試合でダメージを受けた際のMRI検査の実施、水抜きなどの過度な減量を制限するための尿比重検査の導入や、前日計量から当日体重が10%以上増えた場合は転級を命令するルールづくりなど、多岐にわたる対策を導入する方向性で合意。今月中にも開催する見通しの協会の臨時理事会での協議を経て、正式に決定したものは順次実施していくという。

 痛ましい事故が立て続けに発生した異常事態を受け、今回の緊急会合では考え得る限りの安全対策を俎上(そじょう)に上げ、費用負担などの詳細な実現可能性はいったん度外視して検討したという。たとえば昨今の社会情勢で救急車が通報後にすぐに到着しないケースも想定されるため、自前のものを配備する方向で協議し、JBCの安河内剛本部事務局長(64)は「購入するか、病院のものを借りるか、民間の救急車と契約するか」と説明した。

 また、水抜きなどの過度な減量を抑制する方向性を示し、前日計量から10%以上当日体重が増えている選手には次戦からの転級を義務づけるルール整備も検討する。その場合、世界王者も例外ではなくなれば王座返上が余儀なくされる。

 ボクシング界では近年、23年12月の試合後に意識を失った穴口一輝さん(真正)が硬膜下血腫のため昨年2月に死去し、今年5月には重岡銀次朗(ワタナベ)が試合後に急性硬膜下血腫で開頭手術を受けた。さらに今月2日の興行に出場した神足茂利さん(M・T)、浦川大将さん(帝拳)がともに急性硬膜下血腫で開頭手術を受け、意識が戻らないまま帰らぬ人となった。

 相次ぐリング禍の悲劇を受け、協会の元WBA世界スーパーフライ級王者セレス小林こと小林昭司会長(52)は「ボクシングに関係する者として残念で悔しい思い」と沈痛な面持ちで述べ、「(対策として)何が正解かはわからないが、考えられることはやらないといけない。こんな事故が起きないように、少しでもゼロになるようにしていきたい」と決意を込めた。頭部へのパンチでダメージを与え合うという競技の根幹が揺らいでいるだけに、協会の加山利治事務局長(53)は「このままではボクシングはやめたほうがいいという話まで(出るほど重大な局面に)きている。協会も(それぞれの)ジムの中も考えないといけない」と悲壮感をにじませた。

 また、今月中にもプロアマ合同での医事委員会を開催し、医師から事故リスクについての講習を受ける。JBCの安河内事務局長は「僕ら(ボクシング業界)は苦しい状況だが、今回、協会さんの(再発防止に向けた)強い覚悟と意思を確認できた。(難局を)乗り越えていきたい」と述べた。

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