ボクシング2選手死去 対策、原因究明は一筋縄ではなく困難 全ての人が悲劇を当事者として受け止め、安全性考え直す契機に
今月2日に東京・後楽園ホールで行われたボクシングの日本ライト級挑戦者決定8回戦に出場後、急性硬膜下血腫で緊急開頭手術を受けた浦川大将選手(帝拳)が9日午後10時31分に死去した。28歳。日本ボクシングコミッション(JBC)が10日、発表した。同じ興行で行われた東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦に出場後、急性硬膜下血腫で開頭手術を受けた神足茂利選手も8日夜に亡くなっており、2人が相次いで帰らぬ人となる異常事態に、JBCは同日、都内で緊急会見を開いた。
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胸のすくような鮮やかなKO劇はボクシングの醍醐味(だいごみ)だが、魅力は危険性とも表裏一体だけに対策は一筋縄にはいかない。JBCの安河内氏は「競技が内包する危険性をどうなくすか」と頭を抱える。
原因究明も困難だ。重岡銀や、今回の神足選手の試合はダウンシーンもなく、人生を賭けた王座戦で接戦でもあっただけに、一見して大きなダメージを負った場面もレフェリーストップのタイミングもなかったように見えた。他方、試合直前に体内の水分を一気に抜く「水抜き」と呼ばれる減量法の影響も指摘される。さらに、安河内氏は近年の日本ボクサーの攻撃力が飛躍的に向上したことも遠因ではないかと私見を交えるが、可能性は多岐にわたり、問題点が明確ではないだけに有効な手を打つのは難しい。
一方、神足選手と同門の中谷潤人(M・T)は定期的にMRI検査を受けていることを明かし「選手も(安全への)意識を持つことが大事」と語った。統括団体だけではなく、選手やジム関係者、プロモーター、ファン、あるいはメディアも含め、ボクシングを取り巻く全ての人が、今回の悲劇を当事者として受け止め、安全性を考え直す契機にするしかないのではないか。(デイリースポーツ・藤川資野)





