１９日に行われたボクシングＷＢＯ世界ウエルター級タイトルマッチで、王者ブライアン・ノーマン（２４）＝米国＝に５回ＫＯ負けした同級２位の佐々木尽（２３）＝八王子中屋＝が２５日、都内で会見した。失神ＫＯに終わった直後は救急搬送され、記憶も一部失うほどのダメージを負ったが、６日遅れで試合を振り返り、「気づいたら病院で起きて『今何をしているんだろう』と。徐々に（記憶が）戻り、１日で全部戻った。大丈夫」と報告。「結果が出せなくて悔しい」と唇を噛みつつ、「絶望は全くない。希望は見えるので、ベルトを持った姿を見せたい」と早くも再起を誓った。

　世界でも層の厚いウエルター級で日本勢初の戴冠を目指した佐々木だったが、初回からカウンターを食らい２度ダウン。さらに、５回にはカウンターの強烈な左フックをまともに被弾し、キャンバスに後頭部を打ちつけて大の字になった。「（初回に）見えない角度からカウンターが来て、側頭部に当たって効いてしまった。あそこから自分のプランは崩された。ムキになって雑に攻撃的になってしまい、またカウンターを食らった。２回からは足に力が入らなかった。正直、効いていた」と振り返った。

　世界の壁にはね返される形となったが、「一番はボクシングスキル、技術の差を感じた。フィジカルも相手の方が当日重かったのはあるが、根本的なスピードとパワーの差は感じなかった。感じたのは技術の差。一般的に（客観的に）見たら相当な差があったと思うが、今回味わったものを吸収すれば、勝てるかもしれないと実感が湧いた。技術の差を勉強して磨いていけば、まだ（世界を）取れると思っている」と率直な思いを明かした。

　今回のビッグマッチに向けては強気な発言を繰り返したが、「本当に勝てると思っていた。リングに上がっても、最初ダウンをもらうまでの４０秒くらいは勝てると思った」という。王者ノーマンの付け入る隙のない強さに玉砕し、「ノーマン選手クラスとやって、（自分の）レベルが低かったと学んだ」と佐々木。ただ、実際にリング上で拳を交えた者として「たぶん、周りから見たほど差はない。技術の差が（大きな）差に見えてしまっているが、そこまで差はなかったし、相手も嫌がっている場面もあった」とも強調した。

　約５０分に及ぶ記者会見は徐々に熱を帯びた。終盤には立ち上がって、ノーマンのディフェンス技術とともに最後に被弾したカウンターの左フックについて身ぶり手ぶりを交えて解説する異例の場面もあった。「この技術をまねて高めれば、世界を取れる。全てにおいて自分が下回っていたが、技術を磨けば、成長できるスペースがすごくある。そこが希望。欲を言えば、１、２年くらい突き詰めてやれば（世界再挑戦に）間に合うと思う」。不屈の２３歳は、早くも意欲をかき立てていた。