佐々木尽 難攻不落王者に真っ向勝負も失神KO 日本人初のウエルター級世界王座奪取ならず 担架で搬送
「ボクシング・WBO世界ウエルター級タイトルマッチ」(19日、大田区総合体育館)
WBO世界ウエルター級タイトルマッチが行われ、同級2位の佐々木尽(23)=八王子中屋=は王者のブライアン・ノーマン(24)=米国=に5回KO負けし、日本人初の世界ウエルター級王座獲得はならなかった。佐々木は1回に2度ダウン。5回には左の強打を受け倒れると、陣営が棄権を申し出た。
勇敢に立ち向かったチャレンジャーは壮絶に散った。難攻不落のウエルター級で、日本勢初戴冠の夢を乗せた8オンスのグローブを振り抜いた佐々木だったが、最後は大の字になって失神した。「ありがとう」「素晴らしかった」-。玉砕した23歳は担架で搬送されたが、夢を見た観客からはねぎらいの声と拍手があふれた。試合後は意識もあり会話もできるものの、大事を取って救急搬送され、試合後の会見はキャンセルとなった。
王者に真っ向勝負を仕掛けた。初回から2度ダウンを喫する劣勢となったが、すぐに立ち上がり、最後までワンチャンスに懸けて強打を狙った。アクセル全開の反動で3回にはフラフラになり、自分を鼓舞するように「来い」とほえた。5回はボディーを打たれた後、右を打ちにいったところにカウンターの左フックを合わせられ被弾。真後ろに吹っ飛ぶとキャンバスに後頭部を打ちつけてダウンし、カウント中に陣営がタオルを投げた。
シュガー・レイ・レナード、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ-。名だたる王者をはじめ、世界で最も層が厚く競争が激しいといわれる階級で日本勢初の王座戴冠を夢見てきた。興行を主催した大橋ジムの大橋秀行会長は「挑戦することすら難しい階級」と強調する。王者が来日して防衛戦を行うこと自体異例だが、「佐々木は度胸もあって物おじしない。宇宙人みたいなところもあり、何かを起こす雰囲気がある」と、無鉄砲な23歳のエネルギーを買って実現に奔走した。
「歴史を変えるために生まれてきた」。その自負は成就こそしなかったものの、国内36年ぶりとなったウエルター級王者との魂の打ち合いは一つの歴史の一ページとして刻まれる。
◇佐々木尽(ささき・じん)2001年7月28日、東京都八王子市出身。中学1年時に八王子中屋ジムに入門し、ボクシングを始めた。18年8月にプロデビュー。スーパーライト級時代に日本ユース王座に輝いたが、21年10月にWBOアジア・パシフィック&日本王者の平岡アンディ(大橋)戦でプロ初黒星。ウエルター級に転向し、23年1月にWBOアジアパシフィック同級王座を獲得。24年5月、東洋太平洋王座も手にして2冠に輝き、25年4月25日付で両王座を返上。右ボクサーファイター。174センチ。





