メジャーリーガーTAJIRIが中央から“消えた”ワケ 福岡拠点「九州プロレス」に所属

 世界最大のプロレス団体である米WWEで5年間にわたって活躍し、国内大手の新日本、全日本、ハッスルでもレギュラーとして活躍したプロレスラー、TAJIRI(54)は現在、福岡を拠点とする団体「九州プロレス」に腰を落ち着けている。プロレス界のメジャーリーガーはなぜ、中央から“消えた”のか。デビュー30周年の今年、書き下ろしの新著「真・プロレスラーは観客に何を見せているのか」(徳間書店)を世に問うたTAJIRIに聞いた。

 「真・-」はTAJIRIが「プロレスを通して、世の中に対して本当のことを忖度(そんたく)なく書いた」警世の書であるとともに、セカンドライフの指南書という側面もあるのが肝だ。

 「30年もやってると、プロレスはある程度やり尽くした。いつまでもちっちゃいことにこだわってやっていてもしょうがない」という心境になっていたTAJIRIが九州プロレスに入団したのは、昨年1月のこと。ゼロ年代に新日本を席巻した魔界倶楽部の魔界2号としても知られる筑前りょう太理事長の「理念に共鳴した」ことが、大きな理由だった。

 九州プロレスは「九州ば元気にするバイ!」を使命に掲げ、プロレスという大衆娯楽を通した地域貢献を行っているNPO法人。観戦は地元企業などの協賛により原則無料で、流血もないため、家族で楽しめる。年間約50大会を開催する他、不登校の中高生へのプロレス授業や、高齢者施設、障がい者施設、児童養護施設などへの慰問などを実施しており、活動は今年で16周年を迎える。

 「誰のためにやるかが大事。九州プロレスは素晴らしいことをやっている。何らかの形で世の中の人の役に立つためにやる。楽しいプロレス、いこいのプロレスが主眼になっている。初めて見る人が一発で名前を覚えて応援してくれる。プロレスの原風景です」

 TAJIRIは福岡に移住した。今の暮らしは「楽しいだけ」だという。「満員の通勤電車に乗らなくていい生活。自然がいっぱいあるところで、ものすごくきれいな海まで電車で20分。人々がギスギスしていなくて、子供たちがすれ違うとあいさつしてくれる。家事は自分で全部やっています」。その生活は、セカンドライフを扱うテレビ朝日系の人気番組「人生の楽園」を思わせる。

 既に余生も考えており、佐賀県の唐津市で送りたいと計画している。「唐津が好きで、しょっちゅう行っています。古民家が3000軒くらいある。そこで貧乏な若者の旅人の宿みたいなことをやれたら一番いい。その時々でやりたいことをやれればいい」という。

 一方で、海外からの試合、指導のオファーは引きも切らず、福岡を拠点に現在も北米、欧州、アジアなど、世界中を飛び回っている。この取材も、米遠征に向かうため韓国の空港にいたところをつかまえたものだ。このライフスタイルはTAJIRIならではだろう。

 今年9月19日にはデビュー30周年を迎え、同28日に生まれ故郷の熊本県玉名市で記念興行を行う。「祝うつもりもなかったけど、九州プロレスにいる以上、できるならやった方がいい。玉名を元気にするバイ!と」と、何度も玉名入りして準備に励んでいる。

 第二の人生を考えている人たちに、TAJIRIは「今、地方に移る人が多いじゃないですか。いいこといっぱいありますよ。やってみたら不安に思うことはない。そういう人にも(『真・-』を)読んでほしい。ちゅうちょしているうちに終わってしまう人生は一番もったいない」とメッセージを送ってくれた。

 ◆TAJIRI(たじり) 1970年9月29日生まれ、熊本県出身。94年、IWAジャパンでデビュー。2001年、米WWE入団。世界タッグ、WWEタッグ、WWFライトヘビー、WWEクルーザー、WCW USの各王座を獲得。06年以降はハッスルや新日本で活躍。スマッシュ、WNCで団体運営も経験。全日本などを経て23年に九州プロレス入団。得意技はバズソーキック、タランチュラ。著書に「戦争とプロレス」「少年とリング屋」など。172センチ、83キロ。

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