【長谷川穂積の拳心論】尚弥のカウンター 車の正面衝突のよう

 「ボクシング・WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチ」(10月31日、ラスベガス)

 統一王者の井上尚弥(27)=大橋=が、挑戦者でWBA2位、IBF4位のジェーソン・モロニー(オーストラリア)を7回2分59秒KOで下した。スーパー王者に昇格しているWBAは4度目、IBFは2度目の防衛成功。デイリースポーツ評論家の長谷川穂積氏は尚弥が6、7回にダウンを奪ったカウンターを「車の正面衝突のよう」と評し、さらなる活躍を期待した。

 ◇ ◇

 コロナ禍の中での1年ぶりの試合は、スパーリングに外国人パートナーを呼ぶことができないなど、練習環境も厳しかったと思う。しかし、井上選手のコンディションの良さを見て、彼がいつか必ず来るであろう試合を想定して、毎日の自分と戦ってきたことがよくわかった。

 モロニーは左右によく動き手数も多いから、KOで勝つことは難しい選手。さらに井上選手相手ということで気合を相当入れてきている。それでも、倒すことを期待され、重圧がある中で、井上選手の冷静さと判断力はすばらしかった。

 2度のダウンは、倒すならこの倒し方が理想というカウンターだった。6回は相手のジャブに状態をそらせながら合わせて打った左フック。最後のKOのカウンターもそうであるように、あれだけ動く選手には、よけてから打つカウンターより、車の正面衝突のように相手のパンチに合わせて同時に打つ方が、より効かせられると考えてのことだろう。

 もちろん間違えれば自分にリスクもある。しかし、それでも間違いを犯し、ポカをするイメージが湧かないのが彼の強さでもある。

 1年ぶりの試合にもかかわらず、本場ラスベガスでいいパフォーマンスが見せられたということは、世界中どこでも戦えるということだろう。井上選手の魅力は、シンプルだが“倒せる”こと。その意味でも同じ東洋人のマニー・パッキャオのようなスターになれる可能性がある。次は勢いのあるWBO同級王者のカシメロとの統一戦を見てみたい。

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