真道ゴー、拳に懸けた性別適合手術

 女子からの卒業を期した一戦は間違いなく女子を超越していた。13日、後楽園ホールで行われたボクシングのWBO女子世界バンタム級王座戦。元WBC女子世界フライ級王者・真道ゴー(28)=グリーンツ=が日本女子初の世界3階級制覇王者・藤岡奈穂子(40)=竹原&畑山=に挑み、壮絶に散った。

 性同一性障害を公表しており、世界王座に返り咲けば性別適合手術を受ける予定だった。日本女子最強と称される藤岡に対し「気にくわない」と挑発。「女子のてっぺん」を証明して男性へと生まれ変わるつもりだった。

 試合は真道が先制した。身長167センチと身長で上回り、バスケットで培った身体能力で初回、王者をとらえた。右ストレートを完ぺきに顔面に打ち込み藤岡の腰は落ちかけた。「真道、強いぞ!」。陣営、会場のムードは一気に高まった。

 だが2回以降、王者はすぐ立ち直った。そして牙をむいた。メキシカンのような左右からの強烈なフックがボコボコ、顔に入り真道は劣勢に立たされた。

 勝敗を決定付けたのが4回だ。バッティングを左目下、鼻に食らった。本石昌也会長は「あれで折れた。でもゴーは言わなかった。『止められるから』って」と振り返る。

 目の焦点は合っておらず、パンチは空を切った。逆にノーガードの顔面には何度も強打を被弾した。そして8回。連打からの右をまともに浴びて尻もちをつきダウン。ぼう然と周囲を見渡し、ダメージは明らか。それでも立ち上がった。その後も、ラスト10回までリングに立ち続けた。

 大差判定0-3で藤岡に続く2階級制覇はならず。試合後は控室で目の下を包帯で巻かれ、起き上がれず。病院へと直行した。代わりに対応した本石会長は左眼窩底と鼻を骨折していたことを明かし、「4回から距離が分からなかった。それでも最後までケガのことは一言も言わず、立っていた。あいつはすごいやつだよ。藤岡選手が強かったし、言い訳はしないけど、できればベストでやらせたかった」と、弟子の心情を思いやった。

 勝つ気満々だった会長はこうも言った。「藤岡は想像よりはるかに強かった。勝てると思っていた。悔しいけど、あれは怪物」。

 女子ラストマッチ覚悟の真道に対し、日本女子の先頭に立ち続けてきた藤岡の“女子をなめるな”というプライドが爆発したように見えた。聖地、後楽園が騒然となる、日本女子界の歴史に刻まれる豪打の応酬だった。

 真道は翌日、関西に戻り自宅のある和歌山の病院に入院。その後、大阪の病院に移り手術を受けた。進退に関してはケガの回復具合を待ってからになる。

 日本女子最強の称号を手にすれば男性になり、戸籍も変更、生活をともにする彼女との結婚を描いていた。真道の卵子を取り出し、第3者から精子の提供を受けて、彼女に子供を産んでもらうことも考えていた。「男子としてリングに立つ」という途方もない夢も敗戦で白紙となった。

 幼少期から女性であることは苦痛でしかなく、20歳の頃は「死ぬことばかり考えていた」と言う。男性になり家族を持つことは真道にとっては世界王者になること以上の夢だ。

 「この試合だけに集中していた。彼女はすごいものを背負っていた。ゴーに今、どういう景色が見えているか」。本石会長は今は決断をじっくり待つ。ただ入院後、会長には「やり切ったとは思っていない」と漏らした。

 女子もう一丁はあるのか-。最強の藤岡を倒す可能性がある日本女子は真道しか見当たらないのは確か。女子ボクシングに無限の可能性を見せた両者の戦いをもう1度見てみたい。(デイリースポーツ・荒木 司)

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