井上、最速世界王者「似合ってますか」

 「WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ」(6日、大田区総合体育館)

 “怪物”が日本で一番速く世界の頂に駆け上がった。挑戦者・井上尚弥(20)=大橋=が、防衛4度の王者アドリアン・エルナンデス(メキシコ)に6回TKOで勝利。井岡一翔(井岡)の7戦目を上回る日本最速記録の6戦目で世界王座を奪取した。井上は序盤から優位に試合を進め、最後は左ストレートから右の打ち下ろしでダウンを奪い、ストップを呼んだ。

 ピンチを切り抜けての偉業達成だった。日本最速で世界を制した井上尚弥は「似合ってますか、WBCのベルト」と絶叫。二人三脚で指導してきたトレーナーの父真吾さん(42)から肩車の祝福を受けた。

 序盤は圧倒的だった。スピードで上回る尚弥のパンチが面白いようにヒット。3回には連打で王者の左目上を切り裂く。しかし、ここで左太ももの裏がつるアクシデントが発生。直後のインターバルでは「足が死にそうです」と漏らした。

 続く4回からは足が止まり、打ち合いに付き合う流れ。陣営に不安なムードが漂ったが、6回に尚弥は自らの意思で仕掛け、左右の連打で王者からダウンを奪い、レフェリーストップを呼んだ。

 「苦しい場面もありましたが、子供のころからの夢をかなえる思いで頑張りました」と戴冠劇を振り返ったが、「まだ実感がないです」とも話した。悲願成就に真吾さんは涙。所属ジムの大橋秀行会長も「夢じゃないだろうか」とほおをつねった。

 足がつった原因は減量苦。尚弥は肉体も成長途上で「減量は今回が一番きつい」と話していた。大橋会長も今後については「もう、この階級は難しい」と王座返上での転級を示唆。1階級上のフライ級には同門の八重樫がおり、2階級上のスーパーフライ級を目指す可能性もある。

 アマチュアボクサーだった真吾さんの姿を見て、小学1年からボクシングを始めた尚弥。厳しいトレーニングの日々を送ったが、「やめる」と口にしたことは一度もない。真吾さんが「どこへ行くにもみんな一緒。チームワークがいい」という家族に支えられて成長を続け、いつしか“怪物”と呼ばれるようになった。

 だが、今回の試合前にはその家族もピンチに見舞われた。尚弥は試合の約1カ月前にインフルエンザを発症。39度の高熱に襲われて3日間寝込み、1週間練習を休んだ。さらに真吾さんも発症し、指導を離脱。母美穂さん(42)、姉晴香さん(22)もダウンし、無事だったのは弟の拓真(18)だけという惨状。だが、尚弥の底知れぬ実力は、そんな逆境をも乗り越えた。「具志堅(用高)さんの13度防衛を超えたい」と、新たな目標を掲げた“怪物”。その勢いは止まらない。

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