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【金本知憲氏×新井貴浩氏対談2】熱く語った打撃論 割り切る勇気の大切さ

 前阪神監督の金本知憲氏(51)、昨季限りで現役を引退した新井貴浩氏(42)=いずれもデイリースポーツ評論家=がスペシャル対談を行った。ともに名球会入りしている両者が熱く打撃論を交わし、培ってきた野球観などについて語り尽くした。以下は対談その2。

  ◇  ◇

 -昨季までは敵同士の監督と選手の関係だった。今までこれは言ってなかったというのはあるか?

 新井「話す内容が変わりましたよね。金本さんが現役の時は、自分もタイガースにいてバッティングの話しか聞いてなかった」

 金本「俺も監督になって、ケース打撃とか状況判断とか、試合の流れとか。そういう話が多くなっていたかな。俺が監督になる前は、評論家時代はバッティングの話が多かったよね。でも良うなったよ。カープに帰ってから。穴がなくなった。阪神の時はスウェーしまくるから、インサイドしか打てない時期、アウトコースしか打てない時期が丸見えで分かるんよ。ちょっとコントロールのいいピッチャーが来ると確実に打てなくなる。コーナーどちらかにちゃんとしたピッチングされると打てない。だからチャンスに弱かったんよ。カープに帰ったら穴がなくなって幅も広がったし。打席での余裕も出ていた」

 新井「それが割り切りですね。割り切る勇気が出てきたって言うか。それまでは、このカウントでたぶん変化球なんだけど、もし甘い真っすぐが来て、見送ったらもったいないとか思ってましたもん」

 金本「見送ったら2ストライクになるとかのう。追い込まれるしとか。でもそれは俺の強みやった。追い込まれてから結構、粘っていたから。よう言っとったよ。2ストライク追い込まれてもいいや、追い込まれてからの方が集中力が出るから。このケースは三振さえしなかったらいいんでしょって。余裕があったよ。だから2ストライクまで割り切れたんよ」

 -打席の中での決め事を徹底していた印象もある。

 金本「そう。きょうはこの(右)ピッチャーはシュート系が多いから逆方向に打つとかね。このケースは絶対に右方向とか。絶対に何かは打席入る前に決めとったよね。打つ方向か、球種か、コースかな」

 新井「広島に戻ってから技術的にも変わったんですね。ちょっと良くなったんで、そういうことも考えられるようになりました。年齢も重ねてきたんで、そうやらないといけないと思ったのが良かったかもしれません。ケースによって、カウントによって考えながらやっていくうちに、割り切る勇気が出てきた。これ次は絶対、チェンジアップという時があれば、それだけを待って。それまではひたすら真っすぐを待って、真っすぐを待って、チェンジアップに豪快に空振りしてしまってたんですけど…。自分が打てないピッチャー、対戦成績が良くないピッチャーに対してはそれをやりだしたんですよね」

 金本「俺が若いときから持っていた感覚が、やっと引退前にできたんよ(笑)。決して深い話ではないよ。俺には技術がないから、しっかり配球を読んで、キャッチャーのクセとか傾向を完璧に把握して、狙った球を確実に打とうというスタイル。追い込まれてからは、とにかく粘っていれば四球を取れるかもしれないとかね。若いときは追い込まれてからヒットを打とうなんて思ってもいない。とにかく粘って粘って。打つことなんか考えなかったもん。それで技術がついてくると打て始めたんだけどね」

 新井「逆に若いときの自分を考えると、ようあんな感じで打ってきたなって(笑)。あんな反応だけで…」

 金本「バカじゃけえの(笑)」

 新井「いや本当ですよ。今振り返ってみると。あんな真っすぐ狙いだけで、反応だけでめちゃくちゃな打ち方をしていたなと。考えるだけで恐ろしくなってくる…」

 -2人とも名球会に入っているバッターだが…。技術がないとか、若いときが恐ろしいとか。かなり意外すぎる発言にも取れる。

 新井「だから自分のものがほとんど何もなく、反応だけでやってきたってことなんですよ(笑)」

 金本「お前は2000何本打った?」

 新井「確か2200くらい(2203本)ですね」

 金本「じゃあ昔の試合数でも2000本行ってるわな。今は昔よりも1割、試合数が増えとるから」

 新井「でも本当によう打ってたなと思いますよ。金本さんからは若いときから『状況によっては考えろよ』って言われてたけど。でもそんなの必死じゃったから、とにかく追い込まれたくないって」

 金本「バカじゃけえの!!」

 新井「もう追い込まれたら負けだと思ってたくらいなんで。とにかく甘いボールが来てくれ~って(笑)」

 -2005年の本塁打王争いについて。あの当時を振り返って。

 新井「僕の打ち方は金本さんに教えてもらったあの年がベースとしてありますよ。『基本、真っすぐ立って真っすぐ回りなさい』って。それがベースにあります。でもそこから自分でああだ、こうだ考えながらやってきて、金本さんからも『アホじゃ、バカじゃ』と言われながらやってきて…こうやっとけばいいって言うのがだんだん分かり始めた時期だったんです。でも引き出しが自分の中にはなかった」

 金本「この頃はよう打ち方を変えとったよ。すぐ浮気するんよ。こっちの方が簡単に打てるかもしれんと。ここをこうしたら、もっと簡単に打てるかもしれんと。俺みたいに一途な男としての信念が欲しいな!!だから“バッティングはこうだ”という信念があって、相手ピッチャーによってタイミングを少し変えようとか」

 (続けて)

 金本「一言で言うと、新井のバッティングは動きすぎなんよ。要は動きすぎ、開きすぎ、突っ込みすぎ。キャッチャーに聞いたら、やっぱり動かないバッターが怖いって言うもんな」

 新井「動かない、ポイントが体に近いバッターが一番、怖いって言いますよね。キャッチャーは『よし詰まるだろう』というところから、いきなりバットが出てきて直球をライト方向に放り込まれると、何を投げさせたらいいんやって思うみたいですね。ポイントが近くて打てるバッターはイヤみたい。でもポイントが近くて詰まって打てないバッターはもちろん、違いますけど」

 金本「まあ新井の話に戻ると、カープに戻った時に俺が評論家でキャンプに行って見たときに、だいぶ前には突っ込まなくなったなという話はした。例えばステップしたときに重心を真ん中に置くとか、後ろに残すとか、人によって色んな表現があるんだけど。落合さんは後ろの足に9:1という意識でちょうどいいという話をしていた。俺は7:3くらいでちょうどいい。それが自分では合う。でも実際には前の足にだいぶ体重はかかっているんだけどね。これはイメージの話であって、五分五分にしちゃうと体が前に行ってしまう。俺は7:3、落合さんは9:1。水谷(実雄)さんもそうやのう。10:0か9:1って言ってた。それくらいの感覚だったけど、調子が悪いときはもう10:0くらいの感覚で打席に立つ。そういうイメージがあって、俺は(スランプを)克服してきたけど、新井はもうステップした時に前足に7割くらい行ってた。でもそれがカープに戻った時に行かなくなった。43本打ったときは、たまたま前に行ったところにボールが来て43本打ったという話でな」

 (続けて)

 金本「だからその43本が長続きしないんよ。次の年も25本とか落ちたでしょ?阪神に来て甲子園では20本も打てないとか。そういう偶然ってあるんよ。そういう年って」

 新井「ありますね~」

 金本「43本打った年のオフにアスリート(広島のトレーニングジム)でティー打撃を見たんやけど、『その打ち方だったら来年、間違いなく30本打てないよ』って言ったもん。保証するって」

 新井「確かに25本でしたね」

 金本「ステップとスイングであれだけ骨盤が動いたら、絶対に捉えることは難しい。打球に角度をつけることもできない。骨盤が動いてる中でたまたまそこにボールが来れば、行くことはあるんよ。新井は力があるから。要は腰の据わりが悪い」

 新井「でも骨盤の使い方ってすごく大事ですよ。横の動きしかできない人に、縦に使えと言っても無理ですもん」

 -金本氏は現役時代、腰の位置がほとんど動かなかった。

 金本「そうそう。(腰の位置に手を当てながら)ここで回るから。これだと体の強さがバットに伝わりやすいんよね。例えば石臼みたいに、下はドンとしているから回転力を増すことができる。腰をドンと置いたまま、体の反動を使わずに、その場で回転させようとしたらやっぱり足を使わないといけない。新井は動きながら、反動で打つタイプだったから。それが広島に帰ってから良くなったんだよね。だから真っすぐ一本で打ちに行っても、割とチェンジアップを寸前で見極められたり。そういうことができるようになってきた。あとは上体が前に突っ込まなくなったら長打が出だすよって言った。だからすごく成長したんだよね。俺がメシ食ってる時に電話がかかってきたから、その場で30分くらい話をしたの。あの時は理解できたでしょ?」

 新井「そうです」

 金本「ただ最後まで上半身が突っ込むのは直らなかった。だから本塁打が少なかった」

 新井「正直言うと、タイガースで最後の年、2014年だったかな。あれくらいから、ちょっと感じが出てきた。ゴメちゃん(ゴメス)が来て出番が少なくなった時。あの時くらいから『あっ!?』というのがちょっとずつ出始めた。だからすごく試合に出たかった。色んなモノが重なって自由契約になりますっていう形になったんですけどね」

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