長谷川穂積×具志堅用高×比嘉大吾(2)井岡さん、井上さんとやりたい

 具志堅用高会長(左)と共に笑顔で話す比嘉大吾
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 デイリースポーツのボクシング評論「拳心論」で健筆を振るう元世界3階級制覇王者・長谷川穂積氏(36)の新企画「ボクが○○してみた!」。今回は5月にタイトルを獲得したWBC世界フライ級王者・比嘉大吾(21)=白井・具志堅スポーツ=と具志堅用高会長(62)に、同ジムで「直撃取材してみた」。日本選手初の全戦KO勝ちで戴冠した新王者に、待ち受ける初防衛戦から、その後の野望まで探ってみた。

  ◇  ◇

 長谷川「次が初防衛。緊張するなあ。僕もしましたね」

 具志堅「(長谷川氏の)初防衛でKOはすごいよね」

 長谷川「挑戦は判定でもベルトを獲ったらよかったけど、初防衛はみんなKOを期待するから嫌やなあ」

 比嘉「そうですね。でもここまで来たら」

 長谷川「連続KO記録(※)は浜田剛史さん(元WBC世界スーパーライト級王者)の15連続ですね」

 具志堅「デビューから世界獲るまで全KOはいないでしょう」

 長谷川「いないです。パーフェクトへのこだわりは?」

 比嘉「こだわりはなかったんですけど、誰もなってないと聞いて、KOで世界王者になろうと思いました。記録が続いているからには、沖縄の先輩、浜田さんのところまで行き、続けられるならもっと続けたいです」

 長谷川「16戦で更新か。16戦16勝16KOはすごいよね。軽量級ではありえない数字」

 比嘉「でも意識しすぎて大振りになるのは絶対にしたくないです。流れの中で倒せれば一番いい」

 長谷川「防衛プランはあるんですか?」

 具志堅「1年くらいはフライでさせたい」

 長谷川「そのまま記録つくれたら一番」

 比嘉「そうですね。KOで勝って」

 長谷川「浜田さんという沖縄の人の記録を破ろうなんて、縁がすごいな。日本やったら(WBA世界フライ級王者)井岡一翔君とやりたい?」

 比嘉「やりたいです。井岡さんはいろんな人から知られているから、自分の知名度も上がると思うんで。(WBO世界スーパーフライ級王者)井上(尚弥)さんもやりたい。スパーは何度かやったんですけど、パンチ力があってテクニックもスピードもある」

 具志堅「井上とやりたいね。ボクシングの技術をよく知ってる。小さい頃からやっているからね」

 比嘉「(ボクシングを始めるきっかけとなった)会長のビデオは、井岡さんの試合が早いKOで終わった後に放映されたものだったんです。また、井岡さんが王者になった時に僕はまだボクシングをやっていなくて、それを見てやり始めたということもあり、井岡さんと統一戦をやりたいと」

 長谷川「その時まだボクシングやってなかったんや?」

 比嘉「今の自分の試合を見て、自分を倒そうとする人も増えてくるといいなって」

 長谷川「(WBO世界ライトフライ級王者)田中恒成君とはやってみたい?」

 比嘉「同い年で自分たちの時代のスーパースター。田中君と井上拓真君(前東洋太平洋スーパーフライ級王者)君がスターでした。自分は1回戦負けが多かったんで、こうして(背伸びして)見てましたもん。彼らの姿をすごいなって。そのステージまで行けなかったこともあった。今うれしいのは、アマの大学生がスパーリングに来るんですけど、(高校時代に)見たことのある人が自分のことを知ってくれるのがうれしいです。アマの時は絶対自分のことを知らなかったと思うけど」

 (ここでジム会員の落語家、春風亭昇太が登場)

 比嘉「あ、こんにちは」

 昇太「(世界王者3人勢に)わあ、すごいことになってる!」

 長谷川「よくトレーニングに来られているんですか?」

 昇太「いや~、よく来られてないんです。しまった、こんなメガネしてた。私、誰だかわかります?」

 具志堅「わかりますよ(笑)」

 (昇太はトレーニングへ)

 長谷川「全勝全KOってどんな感じ?日本でその気持ちを味わえるのは、ほとんどおらへんから」

 比嘉「プレッシャーはあります」

 長谷川「東洋もKOで勝って防衛もして、しかも全戦全勝全KO。ちょっと前の時代やったら戦績だけでスターや」

 比嘉「いろんな人に知られたいんです」

 長谷川「知られたらもてるで?ねえ会長」

 具志堅「人生が変わっちゃうよね。オレでもできなかったのに、もう沖縄で航空会社のCMやってるんだから。演技なんて一切教えてないのに」

 比嘉「演技って、ただ走っているだけですよ!」

 具志堅「走る演技は難しいのに、カウンターの前で走っているんだよ。映像見てびっくりしたよ。オレはCMの演技なんてずーっと後だからさ。21歳でできないよ。度胸がすごいんだ。沖縄凱旋の日に一日署長をやったんだけど、警察入った時点で署長に『オレの友達がお世話になってます』って。友達がつかまっちゃったんだって。オレはできなかった。人見知りで。こいつは誰が来てもビビらないんだ。たいしたもんだ」

 長谷川「こういうおっとりした性格やから、ボクシングになると強いんやろうな」

 具志堅「ボクシングと言えば比嘉大吾というように、ガーンと名を挙げないとね」

 長谷川「僕は比嘉君のファッションも好きなんです。ジャージのチョイスもおしゃれやし、凱旋した時の私服もおしゃれやった」

 具志堅「でも、ナイキのジャージでミズノスポーツへあいさつに行くんだよ。すごいでしょ?上も下もミズノがまったくないんだ。全部別のメーカー」

 比嘉「オレもやばいなって思って。ミズノに行くってわかっていたら自分もミズノ着ていったんですけど」

 長谷川「オレもアシックスにあいさつに行くのに、ナイキの靴を履いて行って、さすがにそれはアカンと言われました。スポンサーなんで」

 以下(3)に続く。

  ◇  ◇

 ※連続KO勝利 日本選手の連続KO勝利は浜田剛史(帝拳)、牛若丸あきべぇ(協栄、現・渡部あきのり=角海老宝石)の15が最多。デビュー戦からは、金井晶聡(姫路木下)、別府優樹(久留米櫛間)の14が最多で丸山大輔(筑豊)と比嘉の13がそれに続く。世界戦の連続KO防衛は具志堅用高の6が最多。

  ◇  ◇

 具志堅用高(ぐしけん・ようこう)1955年6月26日、沖縄県石垣市出身。興南高でボクシングを始め、インターハイ優勝。卒業後、協栄入りし、74年5月プロデビュー。76年10月に当時国内最速のプロ9戦目でファン・グスマン(ドミニカ共和国)に7回KO勝ちし、WBA世界ライトフライ級王座を獲得した。13連続防衛の日本記録を樹立。王座を陥落した81年3月の試合を最後に引退した。戦績は24戦23勝(15KO)1敗。15年に国際ボクシング殿堂入り。白井・具志堅スポーツジム会長。

 比嘉大吾(ひが・だいご)1995年8月9日、沖縄県浦添市出身。宮古工高でボクシングを始める。3年時に具志堅会長からスカウトされプロ入り。2014年6月デビュー。15年7月に敵地・タイで行われたWBC世界ユースフライ級王座決定戦に7回KO勝ちし2度防衛した。16年7月に東洋太平洋フライ級王座を獲得し1度防衛。今年5月20日にファン・エルナンデス(メキシコ)を6回TKOで破って現王座についた。身長160.5センチ。右ファイター。

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