【谷光利昭医師】痔ろう…放置すると「がん」引き起こすことも

 【Q】お尻が痛く、自分で調べてみると「痔(じ)ろう」のようですが…。(40代男性)

 【A】痔ろうの説明をする前に肛門周囲膿瘍の話をしなければなりません。痔ろうの前には、必ずその前兆があるからです。

 肛門周囲膿瘍とは字のごとく、肛門の周囲に膿瘍を形成することです。お尻からすぐ近くに肛門管というお尻の穴を閉める管状の部分があります。その管状の部分に肛門陰窩(いんか)というくぼみがあります。そこに細菌が入ることによって、肛門の周囲に膿瘍腔ができるのです。

 一般的には、極端に腫れて、座ることができず来院される患者さんが多く、ひどくなると歩行も困難になります。肛門周囲の皮膚の下の部分に膿(うみ)が貯留する場合は、局所麻酔をして切開すれば膿は排出され、問題はありません。膿が表面からは見えない直腸周囲やさらに身体の中心部に向かって貯留したり、複雑なアリの巣のように膿を形成した場合には、治療に難渋します。

 CTや、MRIなどで膿の広がりを検索して、適切に膿を出す手術をしないと命に関わることがあります。膿を出す手術を施行すれば、空洞が狭小化し、管状となり、痔ろうの完成です。まれに、幸運な患者さんがいて、自然に膿が排出されて、自然治癒されるケースもあります。幼小児も同様の病気は認められますが、多くの場合は痔ろうにならずに、自然治癒することが多いとされています。

 なぜ肛門陰窩から細菌が入るのか、原因不明なことがありますが、多くの患者さんをみると、排便の際に“気張る”人が多い印象があります。腹圧をかけて、一気に肛門管を広げると、唇がよく避けるように、肛門管も裂けます。いわゆる、切れ痔です。裂けた部分が肛門陰窩であると、細菌が入る可能性が高いと考えられます。液状の便でも、腹圧をかけて一気に排便をすれば、切れ痔の原因になりますから、お気をつけください。

 難治性の痔ろうには、クローン病という原因不明の炎症性腸疾患を合併していることもあり、大腸内視鏡等での検索も必要な場合もあります。痔ろうを放置すると、がんの発生を引き起こすこともありますので、専門の医師に相談することをお勧めします。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで医療コラム「町医者の独り言」を連載中。

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