【野球】傷心の阪神・才木を支えた言葉 優勝決定日に危険球退場→村上が、近本が、坂本が、対戦相手の大瀬良も

 9月7日広島戦の5回、才木(35)は石原に頭部死球を与え退場になる
 キャッチボールする才木(撮影・北村雅宏)
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 周囲からの叱咤(しった)激励に右腕は救われていた。優勝決定日の7日・広島戦(甲子園)で先発した阪神の才木浩人投手(26)は好投を続けていた五回、石原に頭部死球を与え、危険球退場となった。申し訳なさ、悔しさ、気まずさ、福雑な感情が入り交じる中、チームメート、相手チームの選手からかけられた言葉とは。「9・7」の舞台裏に迫った。

 予想外の展開だった。1点リードの五回。先頭の石原へ才木が投じた初球149キロ直球がすっぽ抜けた。危険球で退場。これが今季初死球だった。チームは優勝を果たしたが、歓喜の輪に加わる前、才木は広島ベンチに帽子を取って頭を下げた。「何もなく喜ぶことはできないし、違うと思うので」。幸いにも石原は大事に至らず出場を続けており、才木の謝罪に手を上げて応えてくれた。

 「ちょっと気持ちは楽になりました」と救われたが、危険な目に遭わせてしまったのは事実。優勝決定日に仕事を完遂できなかった意味でも「さすがに気まずかった」と引け目を感じていた。そんな右腕を心配し、胴上げの時に才木のそばにいたのが同学年の村上だった。

 村上は「反省するところは反省しないといけない」と前置きした上で、「せっかくの優勝ですし。もったいないなっていうのはあったので、盛り上げてあげようと思いました」と真意を明かした。今季はそれぞれ2桁勝利を達成し、2人でチームを引っ張ってきた。「才木が勝つから自分も勝たないととか。お互いいい刺激をもらいながら1年間フル回転できた」。だからこそ、ともに喜びを分かち合いたかった。

 セレモニー後、クラブハウスに引き揚げる時には、才木に明るく声をかける近本の姿もあった。伝えていたのはセンターから見て感じていたこと。「真っすぐ良かったよ」。実際に四回までは3安打無失点と好投を続けていた。投球後に近本から感想を伝えるのはよくあること。普段と変わらず感じたことを言葉にし、才木を励ました。

 ビールかけの中継では坂本から「円陣でみんな頑張ろうって言ったのに、一人途中で退場になった」と愛の“いじり”を受けた。ただ、坂本に聞けばこれは才木への気遣いではなかったという。「ああいう状況で優勝して、喜べないというか。石原くんに申し訳なかった。『おまえがもうちょっとちゃんと投げて、こういう形になるのが一番だった』というのが本心でした」。坂本としても石原や相手チームへの申し訳なさを感じていた。才木への「喝」の意味を込めて発した一言だった。

 坂本は試合後、広島の大瀬良からこんな言葉をかけられたという。「才木くんもあの1球だけで、今シーズンやってきたこととか、優勝したっていう気持ちに反映しなくていいと思うから。石原は大丈夫だから、今日は喜んでもらって。また次の試合から頑張って」。すぐに才木に伝えた。相手チームからの優しい言葉に2人は救われた。

 才木は周囲からのフォローに「気遣ってもらって本当にありがたい」と感謝を口にした。その思いに応えられるように、残りのシーズンもポストシーズンも懸命に腕を振り続ける。(デイリースポーツ阪神担当・山村菜々子)

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