【野球】元ロッテのサブマリン渡辺俊介氏が明かす東大野球部エースの息子への思い 「苦労するのは分かってるけど…」プロ志望届提出の意向

 元ロッテ投手で、日本製鉄かずさマジック監督の渡辺俊介氏がこのほど取材に応じ、東京大学野球部のエースでプロ志望届提出の意向を表明している長男・向輝さん(4年)への思いを明かした。父と同じアンダースローを武器にプロ注目の投手にまで成長。自ら道を切り開き、プロ入りを目指そうとする息子に対して「苦労するのは分かってるけど、後押しはしてあげたいと思う」と話した。

  ◇  ◇

 「僅かにでも可能性があるのなら、悔いのないように挑みたい」。向輝さんがプロ志望届を提出する意思を固めたとSNSで表明したのは6月半ばのことだった。

 直後に始まった大学日本代表の選考合宿。強い決意を示すように、向輝さんはメンバーで唯一、3日連続して紅白戦に3連投し、父をほうふつとさせる下手投げから、いずれも1回を無失点にしのいだ。

 最終的に代表からは漏れたがトップレベルの選手たちに交じって存在感を発揮した。

 社会人野球のチームを預かる監督という立場もあり合宿を視察した渡辺さんは「僕がいるから選ばれたとか、そういう疑いがかかるような所には極力行かないようにしてるんですけどね」と打ち明けつつ、「自分で抑えて結果を出しましたからね。ランナーを出しながらなんとか粘って抑えてよかったなと」と息子の投球内容に合格点を与えた。

 実際、アンダースロー投手の特異性は、プロ野球選手の息子だから、東大だから、という“色眼鏡”抜きで、プロスカウトから正当な評価を得てきている。

 昨年のドラフトを巡っては、西武、巨人などで活躍した清原和博さんの息子の正吾さん(慶大)がプロ志望届を提出。プロ野球選手の2世に向けられる世間の関心の高さ、厳しさを、同じ六大学でプレーし対戦経験もある向輝さんはもちろんのこと、渡辺さんも目の当たりにした。

 「純粋にドラフトにかかるかかからないかギリギリのレベルだったら志望届を出すこと自体は普通のことです。プロを目指したい、評価を聞きたいけど、プロ野球選手の子どもは、ドラフト上位じゃないと出しちゃいけないくらいの感じがあった。東大からも出してる人はいるけど、向輝が出すと僕の息子だから余計に比較されたりしますから」

 向輝さんとの関係性には幼いころから気を使ってきた。自分と比較されることで苦労をさせたくないとの思いから「野球をやってほしくなかった」のが本音だった。ただ、野球以外のものに関心をもたせようとしても、その興味は「どうやっても野球に行ってしまった」という。

 野球を続けながら向輝さんは中学受験で中高一貫の海城に合格し、そこから東大へ進み文武両道を貫いた。アンダースローも父から教わったのではなく、東大1年の冬から独自に研究を重ねるなど、自身で道を切り開き、アイデンティティーを確立してきた。

 「東大に入ったことが自信になり、野球部の中でもまれて、周りから向輝という存在を認められるようになって、僕へのライバル心みたいなのがなくなった。随分、僕と野球の話を楽しくできるようになりましたね」

 候補合宿で披露した技術面の進化、精神的な成長ぶりを渡辺さんは感じ取り、さらなるステージを目指す息子に理解を示す。

 「レベルの高い人たち相手に、どこまで自分のやってる技術が通用するのか。挑戦してみたい、やるなら高いものを目指したい、最高のものに触れてみたいっていうのは、多分、東大受験をしてたのと同じようなマインドだと思うんです」

 そして続けた。

 「プロの世界は甘くない。力的にはほんとうに大変ですよ。小さい体で、その世界を目指すとなると。世間の声も含めて、それを超えてでも出したいっていうんであれば、後押しはしてあげたいなと思うんです。苦労するのは分かってますけど、本人がやりたいって決めてるなら」

 167センチの小柄な体で次のステージを目指そうとする向輝さんへ、厳しくも優しいまなざしを向けた。

 今年のドラフト会議は10月23日に開催され、プロ志望届の提出は10月9日に締め切られる。

(デイリースポーツ・若林みどり)

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