【野球】広島 伸び悩む投手を覚醒へ 野村3軍投手コーチが重視する「教え」は 辻が4戦連続0封&高はプロ初勝利
広島の野村祐輔3軍投手コーチ兼アナリスト(36)が若手投手を覚醒へと導いている。指導に携わった辻大雅投手(20)や高太一投手(24)らが1軍で奮闘。伸び悩む投手を対象にした“野村塾”と呼ばれる約2週間の強化期間で、変貌を遂げていく選手たち。その指導の裏側に迫った。
大野練習場のブルペンが“野村塾”の舞台だ。メニューを終えた投手たちの悲鳴が室内に響き渡る。地味できついメニューを何度も体に染みこませるように繰り返す。覚醒に近道はない。これが野村コーチの考えだ。
「投げるのって順番があるんです。例えばフォームの始動が1で、投げ終わりが5とするなら、3の部分だけを直そうとしても、うまくいかない。3を直すためには2や1から見直す必要がある。そこを教えるようにしています」
同コーチが重要視しているのが体の“幹”だ。腹部、股関節など体の中心にある部分のことを指す。“野村塾”ではここを徹底的に鍛える。行うメニューは自身が現役時代に行っていたものと同じ。足を開いた状態でのネットスローや、チューブを使った下半身のトレーニングなど、長い時は2時間を超えることもある過酷なメニューで、体幹をいじめ抜く。
初めて“野村塾”で指導を行ったのが辻だった。投げる順番を体に染みこませるドリルを繰り返し、球速は10キロ以上アップ。「2週間という時間をうまくフルに使えた。体が疲労した状態で2軍に送ったので、投げるのもしんどい状態だったと思います」。左腕はその後支配下登録を勝ち取り、1軍では151キロをマーク。デビューから4試合連続無失点と好投を続けている。
1日・中日戦でプロ初勝利を挙げた2年目の高には、スライダーの投げ方を伝授した。「ボールは下に行くほど重力がかかって変化する。だからリリースした時にマイナス(下方向)に投げ出さないと曲がらない」。伝えたポイントはこれのみ。あとは辻と同じく体幹を鍛えるドリルをこなし、安定したフォーム作りに取り組み、ここまでの好投につなげている。
ここから覚醒が待たれる投手もいる。2軍で苦しんでいた常広に対しては、7月下旬から指導。「投げるのが上手。だから悪い投げ方でも150キロ出せてしまう」とフォーム改善を助言した。体の外側に頼っていたフォームを内側の力を使う形に修正。ブルペンではボールの行方を見ず、姿だけを確認し、1球ごとに良しあしを伝えた。右腕は約1カ月ぶりの実戦登板となった9日のウエスタン・くふうハヤテ戦で、1回2奪三振の好投を披露。最速149キロと復調の兆しを見せた。
「やっぱり自分が見た選手は気になりますね」と親心をのぞかせた野村コーチ。“野村塾”ではきょうもまた1人、覚醒の時を迎えようとしている。
◇野村 祐輔(のむら・ゆうすけ)1989年6月24日生まれ、36歳。岡山県出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。広陵、明大を経て11年度ドラフト1位で広島入団。12年に新人王。16年は25試合で16勝3敗、防御率2.71の成績で最多勝と最高勝率のタイトル。24年現役引退。25年から3軍投手コーチ兼アナリスト。NPB通算は211試合で80勝64敗、防御率3.53。





