【野球】巨人・乙坂がチームにもたらすものとは 吉村編成本部長「一番望んでいる野球スタイル」
巨人は12日に元DeNAで前マリナーズ3Aの乙坂智外野手(31)を獲得した。吉村禎章編成本部長(62)はメキシコ、ベネズエラ、米独立リーグと海外リーグを渡り歩いて得た経験値が獲得の要因の1つと話す。故障者が出た影響もあり若手中心での戦いを続ける巨人。得点力不足の課題を抱える中、乙坂獲得がチームにもたらすものとは何か-。
13日にジャイアンツ球場で行われた入団会見で、真新しい背番号「54」のユニホームに袖を通した乙坂。海外を渡り歩き得た心境について「明日生きるために、今日を頑張る。そういう感じです」と語ったことが強烈な印象として残った。
吉村編成本部長も、この乙坂のハングリー精神を一番に評価する。「野球をずっと諦めないで続けていて、決して恵まれた環境ではないところで彼はやっていた。野球に対する情熱、ハングリーさというのは私たちが一番望んでいる野球スタイル」と説明していた。
異国のリーグでプレーする上で最も過酷さを感じたのは、食事や言葉の違いもさることながら「やっぱり契約期間が2週間とか、1カ月。代わりはいくらでもいるという状況で、最初はキツかった」と乙坂。ただ、年数を重ねて「本来はこうあるべきなんだな」という心境に達したという。
プロの世界は厳しい競争社会だが、乙坂が身を置いた環境が日本でも当たり前にあるかと問われれば、それはない。「明日生きるために、今日を頑張る」。その言葉の重みは格段に違うだろう。
岡本の長期離脱で得点力不足に悩む巨人。短絡的に考えれば、シーズン途中に必要な戦力補強は長打が打てる外国人-となりそうだが、乙坂獲得で得る効果への期待も、うなずける部分はある。
「基本は内部昇格が一番。そのためにこれだけの人数の育成選手を抱えている。そういうチャンスを与えたい」と吉村本部長。育成に主眼を置く中、1軍でも泉口や増田陸、中山、佐々木らがチャンスを得て成長を見せる。だが、不動のレギュラーで定着できるかといえば、まだ足りない。
17日・ヤクルト戦(神宮)では遊撃手として定着しつつある泉口が第1打席の好機で見逃し三振を喫し、三回に送りバントを失敗して直後の守備から交代となった。今季ここまで犠打成功率・711でリーグ5位。得点力不足の中で技術の未熟さが目立つのが実情だ。
「今日は戦力にならないと思って代えた」と話した阿部監督。“懲罰交代”と言えば否定的な声が出るだろうが、厳しい言葉も起用も、目の前の好機を逃せばチームや自身が未来を失う-指揮官はそのメッセージを送り続けているように映る。
だから今、乙坂の存在が若いチームに必要なのだろうか。「明日生きるために、今日を頑張る」。その言葉を体現し、浸透することができれば、見失いかけている虎の尾を追うシーズンに道が開けるのかもしれない。
◇乙坂 智(おとさか・とも)1994年1月6日生まれ、31歳。神奈川県出身。180センチ、82キロ。右投げ左打ち。外野手。横浜高では3年時に春夏の甲子園大会に出場。11年度ドラフト5位で横浜に入団した。14年5月26日のオリックス戦で1軍初出場。同31日のロッテでプロ初安打を放った。その後は外野の主力として活躍したが、21年シーズン終了後に戦力外通告。22年以降はメキシカンリーグ、米独立リーグなどに出場していた。





