【野球】なぜ阪神は首位にいるのか 大山悠輔が初回に見せた高度な技術 アクシデントを未然に防いだ瞬時の判断
「阪神2-3中日」(15日、甲子園球場)
なぜ阪神は首位にいるのか。この日は延長の末、惜しくも敗れる結果となったが、初回、大山悠輔内野手の見せたプレーが、その理由の一端を示していたように映った。
初回2死一塁。中日・細川の三ゴロをさばいた佐藤輝の送球が、シュート回転するような形で少しだけ一塁ベンチ方向にそれた。大山は右足をベースに着けながら、佐藤輝に正対していた体と胸の向きを本塁方向に開き、ミットに送球を収めた。
簡単そうに見えるプレーではあるが、ここに阪神が勝ち続け、首位でいられる理由が隠れているように感じた。もし仮に、大山が体の向きを修正せず、捕球体勢に入っていたら、打者走者と交錯して送球を捕球し損ねるばかりか、大きなケガにつながっていたかもしれない。
5月6日の巨人-阪神戦で同じような光景を見た。初回無死一塁から、犠打を処理した三塁手の送球がこの日と似たような軌道でそれた。巨人・岡本は懸命に左腕を伸ばしてミットに収めたが、打者走者の中野と交錯。左肘の靱帯を損傷して故障離脱した。
この時、阪神、オリックスなどでコーチを務めた岡義朗氏は「一生懸命のプレー。誰が悪い、どこに非があるということではないと思う」と前置きした上で、「岡本が体を一塁ベンチ方向に向け、左腕の可動範囲を広げられる構えにしていれば、打者走者と交錯した時の衝撃を和らげられていたと思う」と解説していた。
12球団野手の故障離脱者を見てみる。ヤクルト・村上は上半身のコンディション不良から1軍昇格後に脇腹を痛めて抹消。サンタナが右前腕部の死球を受けて米国に帰国し、塩見は左膝前十字靱帯の手術を受け、茂木は下半身のコンディション不良、長岡も右膝後十字靱帯を損傷するなど、主力野手が次々に戦列を離れ、最下位に甘んじる現状となっている。
その他でも、巨人は岡本に加えて若林が左大腿二頭筋筋を損傷して離脱中で、DeNAはオースティンが膝のコンディション不良、中日では高橋周が守備中に走者と交錯して左肘関節を脱臼し、福永が左手関節の骨折、木下が左ハムストリングスの損傷でリハビリ中と、故障者の多さが勝ち星を積み上げられない要因のひとつになっている。
パ・リーグでもオリックスでは森、西川、ソフトバンクでは柳田、栗原、今宮、ロッテはポランコ、佐藤らがケガに苦しみ、ベストオーダーを組めない日々が続いている。
だが、阪神では主だった故障者が見当たらず、パ・リーグ首位の日本ハムでも同じことが言える。投手陣においては日本ハムの古林が左内腹斜筋損傷で離脱中ではあるが、この両球団は故障による離脱者の少なさが、安定した戦いを繰り広げられる要因にもなっている。
連勝は2で止まったが、2位・巨人とのゲーム差は9。依然として大差を保っている。残り57試合。優勝ラインを80勝と描けば、29勝28敗のほぼ勝率5割で2年ぶりにリーグチャンピオンに返り咲く。ただ、残り試合数が多いだけに、机上の計算は簡単に成り立たず、不測のアクシデントも怖い。白星を追いかけながら、想定外の事態に備える防御策を整えることも大事になる。(デイリースポーツ・鈴木健一)





