【野球】頭部死球後に取った阪神・坂本誠志郎の行動に称賛の声集まる 「心からの敬意と感謝を」「全人類が優しさに触れた」

 「阪神8-1広島」(20日、甲子園球場)

 5点リードの八回1死一、二塁から、広島ドラフト3位右腕・岡本の投球を左側頭部付近に受けた阪神・坂本誠志郎捕手の行動に称賛の声が集まっている。

 初球。135キロのスライダーかカットボールが抜け、坂本の頭部付近を襲った。坂本は投球が直撃する瞬間、捕手方向に体をひねり、衝撃を少しでも和らげる防御反応を取っていた。アクシデントによるケガなどを軽減させる見事なリアクションだった。

 投球が当たった瞬間にうずくまり、左手で頭部を触るしぐさを見せた坂本だったが、バットを支えにして立ち上がると、三塁方向に飛んだヘルメットを拾い上げ、すぐにマウンドの岡本に視線を向けて両手を挙げた。「大丈夫、大丈夫」とつぶやき、帽子を取って謝罪するルーキーを気遣った。捕手の石原に対しても「OK、OK」と対応。激高して一塁側ベンチを飛び出してきた藤川監督には右肩を抱くようにしてなだめ、一触即発の修羅場から遠ざけようとする振る舞いが見て取れた。

 これらの行動はもちろん、坂本の人間性に裏打ちされたものであるが、坂本が捕手というポジションを仕事にしていることもあるだろう。

 捕手はグラウンドの司令塔と呼ばれる。投手を指先で示すサインや、身ぶり手ぶりのアクションで引っ張り、広い視野で瞬時の冷静な状況判断も要求されるポジションであり、投手の気持ちをよく理解できる存在でもある。時に、故意ではなくても相手選手に死球をぶつけてしまうこともあるだけに、ここで自らが怒りの感情を爆発させてしまえば、新人右腕の未来を奪ってしまうことにもつながりかねないと考えたのではないだろうか。

 プロならば、お互いが最高のパフォーマンスを繰り広げ、ファンが喜ぶような戦いを披露するのが理想。仮に今回の頭部死球に故意的な要素を感じることがあれば話は別だが、坂本がそういった意思を感じなかったことも、紳士的な対応に終始した要因のひとつにあったと思われる。

 坂本は「今のところ何もないので大丈夫だと思います」と自力でクラブハウスへと引き揚げた。

 SNSでは「坂本選手の対応に感心するばかり」「ジェントルマンというか、真のプロを見た気がした」「普通なら2連敗してて怒っても不思議ではないところ。岡本投手も救われたよね」「藤川監督をなだめてるのすごっ」「とにかく坂本選手が無事でなにより」「坂本選手の対応に心からの敬意と感謝を」「まさにスポーツマン」「選手としても人間としても素晴らしい」「坂本誠志郎という漢 全人類が優しさに触れた」といった反響であふれ返った。

 今後しばらくの間、阪神-広島戦は「因縁の対決」とあおられるだろうが、そういった流れも坂本の本意ではないだろう。力と力の真っ向勝負が、野球ファンを魅了する。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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