【野球】阪神 新庄監督も「見習わないといけない」とたたえた近本のワンシーン 中軸でも自己犠牲 岡田監督の「違うんよ」にも合致

 6回、右前へ安打を放つ近本(撮影・田中太一)
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 「オープン戦、日本ハム6-5阪神」(3日、札幌ドーム)

 オープン戦開幕から5連敗となったが、阪神・近本光司外野手の技術が詰まった打席があった。日本ハム・新庄監督も「見習わないといけない」と語ったワンシーン、生み出された流れるような攻撃-。結果は二ゴロだが、大きな価値がある二ゴロだったように思う。

 森下、中野の連打で無死二、三塁の好機を作った四回。打席に向かう近本は右方向をしっかりと視認してから打席に入った。おそらく内野手の守備位置を確認したと見られ、日本ハムサイドは前進守備を敷かず、バックホーム態勢を取らなかった。

 マーフィーが投じた初球、外より高めだったストレートを強引に引っ張り込み、一、二塁間へゴロを放った。相手の二塁手に阻まれたが、三塁走者は悠々と生還。まだオープン戦序盤で本人はカウント的にもタイムリーを狙っていたと考えられるが、打席に入る前のしぐさを勘案すると、右方向へ引っ張るというテーマを持って臨んだと考えられる。

 結果的にヒットにはならなかったが、先制の1点を奪う一打。これを絶賛したのが新庄監督だ。「近本君の最低でもセカンドゴロで1点を取りにいったり、ミエセスの犠牲フライとか、ああいうところは見習わないといけない」。立ち上がりから力強いストレートを投じていたマーフィー。走者を背負ってやや球威が落ちたとは言え、プロでも150キロ超を引っ張り込み、ゴロを打つことは簡単ではない。技術がなければ、ポイントが悪ければ、力負けしてポップフライになる確率は高くなる。1打席目のフライアウトから修正した部分も、背番号5の技術だ。

 キャンプ中、岡田監督は好機で三振した若手選手に対し「ヒットを打つのがアピールと勘違いしてるんよな、若いやつってな。違うんよ。チームの勝利をアピールしたらええんやから」と語っていた。日本ハム戦前には「チームが勝つためにクリーンアップでも犠牲になる、そういう打ち方をしないといけない。そういうチームが最終的に勝って強いチームなんやろな、やっぱりな」と語っていた。

 チームの勝利に結びつく自己犠牲、そこから生まれる最低限の1点。記者が見てきた金本知憲氏であり、福留孝介氏ら阪神の中心打者はこの姿勢を大切にしていたと思う。広い甲子園を本拠地としているだけに、1点の重要性を認識。その上で1点が2点に、2点が3点にと流れを意識するコメントを何度も聞いた。

 実際に続く大山は右前にクリーンヒットを放ち、5番・佐藤輝の一ゴロでは一塁走者の大山がスタートを切っており、併殺を防いだ。2死二塁となってミエセスの適時二塁打で3点目。最低限の1点が2点目、そして3点目につながった。流れるような攻撃は、近本の一打が生み出したといっても過言ではない。

 この試合に限らず、同じ状況で次打者が1点を先制しなおも1死三塁で打席を迎えるのと、無得点のまま1死二、三塁で打席に入るのではかかる重圧が違う。森下が侍に合流するため3番で起用された近本。慣れない場所でもきっちり仕事を完遂する技術の高さ、そしてチームにいい流れを生み出す打席内容は、やはり阪神の精神的支柱なのだろう。

 岡田監督は「まあまあまあ、あれは公式戦入ってうまいこと点を取るという意味での、だけどな。うん。まあもうちょっと先やで、そんなの」と評した。現段階では個々のレベルアップ、調整に重きを置いている段階。オープン戦は5戦全敗だが「だいぶヒットも出だしたし、近本も4打席立てたしな。ドームっていうのもあったし、そういう意味では良かったよな」と収穫を強調した。

 この試合で近本が見せた姿勢がチーム全体に波及し、若手選手が学んでくれれば-。阪神の得点能力は確実に上がっていくだけでなく、強さを持続することも可能だ。5連敗となった中でも、今後を考えれば大きかった近本のワンシーン。結果は二ゴロだが、新庄監督に「見習わないといけない」と言わしめるほど、中身のある打席結果だった。(デイリースポーツ・重松健三)

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