【野球】「ヒットを打つのがアピールと勘違いしてる」 連覇への警鐘を鳴らした阪神・岡田監督 野球脳を養うことの重要性

 南国の強い日差しに照らされた阪神・岡田監督の表情に余裕が漂う。「不安半分」で出発した昨年から心配材料が消え、球団史上初のリーグ連覇に向かう胸の内には自信が宿る。

 キャンプ折り返しを過ぎた時点ではあるが、榊原コミッショナーが「今年も阪神は強い」と発言したように、昨年の日本一チームに対する下馬評は高い。

 だが、2年連続優勝、日本一を今年のゴールに見据える岡田監督が眉間にシワを寄せた。17日の楽天との練習試合だ。

 2点リードの八回無死二、三塁で井上が三振。六回1死一塁の場面では盗塁のサインを出していたが、1ボールから栄枝が中飛、続く前川も初球を打ち上げて中飛。指揮官は「ヒットを打つのがアピールと勘違いしてるんよな。若いやつってな。違うんよ。チームの勝利をアピールしたらええんやから」と厳しい言葉を投げかけ、逆に八回1死二、三塁から自己犠牲もはらんだ一ゴロで4点目を奪った小幡の姿勢を「シーズンに入ったら、ああいう1点が大きいからな。はっきり言って大きい。大きい」と手放しで称賛した。

 昨季18年ぶりのリーグ優勝を成し遂げたが、岡田監督はレギュラーは大山、近本、中野の3人だけだとし、佐藤輝、木浪を含めた他のポジションに競争を求めた。1軍キャンプに名を連ね、チャンスを与えられた選手からすれば、昨季のレギュラー陣を脅かし、定位置を奪い取るためには強烈なアピールが必要だと考えるのが自然な流れだが、強烈なアピール=打つことではないと岡田監督は言うのだ。

 六回の栄枝、前川の場面を例に挙げ、「1球ストライクを見送れるのがチームに対してのアピールよ。そういうのが分からんと、1軍の戦力にはならんよ。『こいつ、1球をチームのために我慢しよった』っていうのがアピールやん」と、スコアブック上では何も残らない打席での振る舞いがチームを勝利に近づけ、当該選手の評価も高めるアピールになると位置づけた。

 一夜明けた18日の練習試合・広島戦。前日のゲキから一転、岡田監督の表情は緩んでいた。17日の試合で苦言を呈した前川が初回に中前打を放って迎えた二回2死から四球を選び、井上も八回1死一、三塁から四球を選んだ。いずれも打てば目立つ場面ではあったが、2人は冷静にボール球を見極めた。

 岡田監督は「内容的にはすごくいいよな。見極めとか、四球選ぶとか。そういう意味でもな。まだ査定はないで、四球の(笑)。四球選んでも査定はないけど、自然に体に染みついた方がええわな。自然にボール振らないというかな、おーん。そらもう、体に染みついたらな、自分のもんにしたら、こっちのもんやからな」と得点には結びつかなかったものの、打ちたいという欲を我慢し、一塁に歩いた過程と結果を評価した。

 阪神は昨季、リーグ最多の494四球を選び、同最多の555得点につなげた。2022年シーズンから安打は20本しか増えなかったが、四球は136個増やし、勝利を手繰り寄せた。ここにも、打つことだけがアピールではないという岡田監督の言葉が詰まっている。

 安打に比べて派手さは少ない四球ではあるが、その価値を認める指揮官の存在があるからこそ、意味は大きい。四球が全てではないが、岡田監督が追い求める野球はさらに細かく、丁寧なものになっていく。状況に即した打撃、判断、野球脳。岡田監督が鳴らした警鐘が連覇への近道となる。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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