【野球】巨人・戸郷のCSゲスト解説でにじんだ謙虚さとクレバーさ 的確な状況判断 ドラフト6位からGのエースへ成長した要因

 ネット裏から試合を見つめる巨人・戸郷=20日
巨人・戸郷翔征
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 阪神-広島のファイナルSでは、地上波だけでなくBS、CS、ネットと中継が多岐に渡った。ただ第3戦の放送予定を見た時、絶対にその言葉を聞いてみたいと思った選手がいた。読売テレビの中継で阪神・川藤幸三氏、赤星憲広氏とともに解説を務めた巨人・戸郷翔征。3月のWBCでもチームの世界一に貢献し、巨人のエースとしての道を歩む右腕がどんな解説をするか-。その第一声は謙虚な言葉だった。

 「ここにいて悔しい思いはありますけど、上位2チームのプレーを勉強していきたいと思います」と謙虚で前向きな言葉を発した戸郷。広島・床田が丁寧にボールを低めに集める立ち上がりを見せると、「いつも通りゴロを打たせる投球だなと思います」と分析。阪神打線については「とにかく1、2番を止めることを意識して臨んでいました」と現役選手ならではの言葉もあったが、最も興味深いと思ったのは五回表、広島が同点に追いつきなおも2死一塁で西川を迎えた場面だ。

 大竹が投じた3球目、小園に二盗を決められ得点圏に走者を背負った。ここからスライダー、カットボール、ストレートと球種を変えながらも見極められ、カットされた。カウント2-2から外角のストレートを見極められると、戸郷がマイク越しに「ここは投げる球が無くなってしまいましたね」とつぶやき「勝負するのであれば、打者の打ち損じを狙っていくしかないと思います」と投手心理、考え方を明かした。

 おそらく普段からマウンドで1球ごとに状況判断をしながらピッチングしているのだろう。ただ投げるだけでなく、打者の反応を見ながら、打ち取る手段を考えながら、ボールに意図を持たせる。

 阪神では藤川球児氏の現役時代、ブルペンでそんな会話が頻繁に交わされていたという。「次の1球はどうする?」。テレビ画面を通して打者の動き、考え方を洞察しながら配球を組み立てていく。このエピソードを聞いたとき、1軍で活躍するためには“考えながら投げる”重要性を再認識させてもらった。

 戸郷も普段からそういう意識の下、マウンドに立っているのだろう。だからあの場面、フルカウントになった際の西川の反応を見て、「投げる球が無くなってしまった」という言葉がスッと出てきたのではと推察される。

 今季、チームトップとなる12勝をマークし、2年連続の2桁勝利をマークした右腕。防御率2・38を記録しながらも、試合後には「初めて外からプロ野球を見させていただいて、阪神の強さを感じましたし、やるべきことがたくさんある」と前を向いた。

 「それ(課題)をつぶして、来年また臨みたいと思いました」と決意を込めた。ドラフト6位から23歳で巨人の大黒柱へと成長した戸郷。決してフロックではない。それだけの理由があることを、ゲスト解説という異例の舞台が教えてくれた。(デイリースポーツ・重松健三)

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