【スポーツ】内藤哲也 蝶野正洋、棚橋弘至に続く41歳でのG1クライマックス制覇 長丁場の戦い方を熟知した男の優勝
今年で33回目を迎えた新日本プロレスのG1クライマックスは内藤哲也が6年ぶりの優勝を飾った。41歳での“戴冠”は、第15回優勝の蝶野正洋、第28回の棚橋弘至に続き3人目。最年長優勝は第6回大会、44歳で優勝した長州力で40歳代の優勝者は長い歴史の中で4人しかいない。
内藤は優勝後、「1カ月近く前のこと思い出したくないね」と語っていたが、例年にない“死のロード”を勝ち抜いてきた本音だろう。大会が始まった90年代に比べて温暖化は進み、7、8月の猛暑は当時の比ではない。さらに今年は史上最多の32人が出場と、タフさが求められていた。その中で内藤が長丁場の戦いを熟知した経験値の高さを見せつけたことに大きな価値がありそうだ。
7月15日の北海道での開幕から1カ月間、決勝まで勝ち上がると10試合を戦わなければならない。一夜明け会見では「けがのこととかあるし、年齢的なこととか考えて、残されたチャンスはそう多くはないのかなと俺は自覚していた。『また来年頑張ればいいや、5年後でもいいや』とか、今の俺には時間的に余裕はなかった。今年のG1クライマックスにかける思いは強かった。ここで結果を残さなきゃという思いは過去の優勝よりは強かった」と話した。今年の大会に懸けていた思いをにじませ、しみじみと振り返っていたのが印象的だった。
勝ち上がり方も14年連続14度目の出場の経験値の高さがなせる技だったのか。リーグ初戦ジェフ・コブとの対戦は黒星スタートだった。若手なら崩れていていてもおかしくないが、「今日で、全勝優勝の可能性はなくなっちまったな。でも、今年は、ブロック2位まで通過できるんでしょ?。ま、そのルールを除いても、ちょっと自信になったな。負けちゃったよ。コブに完敗したけどさ、いい負けだったかな…。この先に期待できる何かを、この試合で見つけることができたかな」と敗戦からの教訓を生かし、勝ち上がるところはベテランらしい。
その後は勝つべき試合をしっかり拾い1位で突破した。一方で今大会リーグ戦で唯一、全勝突破したSANADAは、準々決勝でEVILに不覚を取り優勝の道を断たれた。さまざまなスポーツのノックアウト方式でガチガチ1位が決勝トーナメントでコロッと敗れることは、ままある話。最終目標の優勝を目指す上で内藤はトータルを見据えて戦い、試合巧者ぶりを発揮した。
優勝翌日、午後3時に設定された一夜明け会見で「寝不足MAXですよ。こんな状況でモーニングコールをくれた新日本プロレスの社員さんに感謝ですよ。あなたのしつこいほどの電話でなんとか起きられました」と笑った内藤。新たに勲章を手にした男が休息を経て、リング場でどんな戦いを見せてくれるか注目したい。(デイリースポーツ・水足丈夫)




