【野球】阪神・大山の“我慢”が生んだ一撃 今季12球団で最も追い込まれてボール球を振らない男が放った先制3ラン

 1回、先制3ランを放つ大山(撮影・飯室逸平)
 11回、サヨナラ打を放った小幡(中央)を笑顔で祝福する大山(3)=撮影・山口登
 9回、帽子を投げて悔しがる湯浅(撮影・飯室逸平)
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 「阪神6-5ロッテ」(3日、甲子園球場)

 いろんなミスがあり、湯浅が帽子を投げつける場面もあったが、劇的なサヨナラ勝ちでまたも3連敗を阻止した阪神。中でも殊勲打の小幡に満面の笑みで駆け寄っていく大山悠輔内野手の姿が印象的だった。そして「今日は僕じゃなくて、小幡のことを書いてください。お願いします!」と報道陣に異例のお願い。ただ悪い流れを断ちきったのは間違いなく、4番の一撃だったように思う。

 初回1死一、二塁で迎えた第1打席。非常に興味深いシーンがあった。3球でカウント1-2と追い込まれた4球目、ロッテ・種市が投じたフォークは内角低めに鋭く落ちた。かつて阪神に在籍し、2度の奪三振王に輝いたメッセンジャーが「右打者から空振りを奪う最も有効なボールは内角低めのフォーク。外や真ん中のフォークは打者もマークする。でも内角低めはあまり意識がないし、錯覚も起きる」と右のパワーヒッターにフル活用した1球だ。

 だが大山は自分の形を崩さずに悠然とボールを見送った。バットを出すわけでもなく、見切ったような形だった。難しいはずの内角フォークをきれいに見逃されたバッテリーは当然、四球で満塁の可能性が出てくるフルカウントにしたくない。同じボールゾーンを振らせるフォークは選択しづらくなり、球種を変えたくなる。続く5球目、我慢した大山は見事に外角スライダーを一閃してバックスクリーンにたたき込んだ。

 西武に連敗し、雨天中止を挟んで迎えた一戦の初回に飛び出した3ラン。岡田監督も「ホームランの3点で、あれが大きかったんで。あれがなかったらズルズル行ってたと思いますね」とたたえた。

 今季の大山は特筆すべきデータがある。「Japan Baseball Data」によると、2ストライク後のボールゾーンスイング率は25・5%。これは12球団の野手で最も低い数値。イコール、どの打者よりも追い込まれてボール球を振っていないということになる。

 今季の本塁打6本のうち、2ストライク後に出たアーチは4本。ここ数年、追い込まれてからのもろさを露呈していたが、逆に「追い込まれて強い打者」へと変ぼうをとげた。

 以前、岡田監督は評論家時代に「打席で自分の姿を長く見てもらえばええんよ。4番にはそれくらいの余裕がほしいな」。早打ちが目立った大山にアドバイスを送っていたが、新指揮官の下で見せている背番号3の変わった姿。頼もしさを増した4番が打線の中心に座っていることも、3連敗しない要因の一つかもしれない。(デイリースポーツ・重松健三)

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