【野球】元阪神トレーナーが吉田正尚の成功を確信する理由
レッドソックス吉田正尚外野手(29)の躍進がとまらない。この日のブルージェイズ戦で6号本塁打を含む3安打3打点と打ちまくり、これで今シーズンのメジャー最長となる14試合連続安打。故障者も少なくないWBC日本代表組のなかで、元気な吉田の存在感が際立っている。
昨年セ・リーグ三冠王に輝いた村上宗隆の打撃不振がクローズアップされる23年シーズンの序盤。世界一を獲った侍ジャパンのメンバーが所属球団で本領を発揮できていない要因は、おそらく一つに限定されるものではないが、その多さゆえ、慣れない新天地で喝采を浴びる吉田のパフォーマンスはなおさら目を引く。
吉田の活躍の土台がWBC期間中から維持してきたコンディションであることは明白だが、「日本の4番」を陰で支えていた人物が阪神タイガースの元トレーナーであることは、あまり知られていない。
「WBCで活躍してほしいことは前提でしたけど、併せて、新天地で順調に過ごせることも重要だと考えていましたので、その2本立てであの期間(1月~3月半ば)を大切にしようと思っていました。いま、正尚選手の元気な姿を見られてうれしいですし、携わることができて良かったと思っています」
吉田の依頼で年始の自主トレからWBC大会期間中もチームと同宿で治療に従事したのは手嶋秀和さん。阪神で12年間、球団トレーナーを務めた男だ。
20年に独立し「甲子園スポーツトリートメント治療院」を開業。多数のプロ野球選手の治療に従事している手嶋トレーナーと吉田の付き合いは3年目になる。知人を介し、21年の自主トレで知り合って以来、吉田の信頼を得て大舞台での治療、コンディショニングを託された。
その手嶋さんを訪ね、トレーナーの立ち位置から見た「吉田の凄み」を聞いてみた。
「アメリカでもマッチョマンのイメージがファンの間で定着していますけど、マッチョと言われる裏側では、食事面もすごく気にしていますし、すべてのおいて知識が豊富。とにかく研究心がすごい。栄養面もそうですし、トレーニングや治療、ケガに関しても詳しいので、こちらもその全てに答えを用意しておかないといけません。これは良いと思ったものは採用し、継続する選手。シーズンに入ってからも、距離や時差がある中でときどき連絡を取り合うのですが、彼が興味がありそうなことの答えを常に持っておくようにしています。治療に関しては画像を使ったりもしながら…」
小柄ながら、鍛え抜かれたボディーから放たれる弾道、放物線は本場のファンも惹きつけるわけだが、吉田の体をケアする手嶋さんはあのパワーをどのように見ているのか。
「可動範囲が狭くなれば力任せになる。力任せのバッティングでは飛ばないというのがトレーナーサイドとしての見解です。正尚選手が秀逸なのは、トップに入ったときの胸郭(きょうかく)の開きが他の選手と比べても断然広いところだと思っています。ゴリゴリの体つきをしているメジャーリーガーと比べて正尚選手がどうなのかといえば、遜色ない飛距離が出ているわけです。打球速度もしかりです。単純にマッチョな体だけが素晴らしいのではなくて、あの体を最大限に生かす柔軟性としなやかさがあってこそ、ああいうパフォーマンスが生み出されているんだと思っています」
阪神のトレーナー時代、オフィシャルとして2度のWBC帯同を経験している手嶋さんは、大会後に不調をうったえる日本代表選手を何人も見てきた。それだけに、吉田が自主トレに励んでいた1月、WBCの大会期間中も責任をもってケアしたい旨を伝えていたという。
「自分が『良い』と思ったことは、変化に恐れず、練習でトライして良ければ採用するという、柔軟性をもっている選手です。オリックス時代の昨シーズン中でも、少しトップの位置を変えたりだとか変化を起こせるのは凄いことだと思いました。彼の残した凄い数字がまぐれじゃないというか、こんなことをやっているから数字が残るんだなというか…。打撃の調子が悪かったときは、実際に、体の状態が万全じゃなかったのではないでしょうか。今(メジャーで)ようやく慣れてきたとか言われていますけど、体がどんどん万全になってきていると思うんですよね。少し打率が下がってきたときに『大丈夫か?』などと言われていましたけど、個人的には大丈夫だと思って見ていました。あのクラスの選手で、しっかり自分を理解し、やるべきことが分かっていて、いつもチャレンジしている人が成功しないわけがないと思っていますので」
体が万全であれば成功する。そんな確信に満ちた胸中を明かした手嶋トレーナーは、この先も吉田に寄り添う準備を整えている。
(デイリースポーツ・吉田 風)
