阪神・岡田監督が見せた「勝負師の視線」相手のミス直後、ニヤリと笑って目を向けたのは?ベンチが歓喜に沸く中

 「ヤクルト0-7阪神」(29日、神宮球場)

 思わず背筋に冷たいモノが走った。テレビで中継を見ながら阪神・岡田監督の様子をうかがっていた時だ。相手のミスに手をたたきながら、ニヤリと笑ってヤクルトベンチに目を向けた指揮官。周囲が走者の進塁に沸く中、1人だけ頭が別角度を向いていた。

 場面は2点リードの七回無死一塁。木浪の打席でカウント1ストライクから木沢が投じた直球がやや高めに抜け、捕手・中村が後ろにそらした。その瞬間、阪神ベンチの様子が映し出され手をたたく岡田監督が。その直後、笑みを浮かべて一塁側ベンチの様子をのぞき込むようにうかがっていた。

 周囲のコーチや選手たちは二塁に進んだ坂本の方に視線を向けていた。野球経験者であれば、誰もが得点圏に進んだ走者の行方を追うだろう。だが指揮官は相手の表情をうかがい、次なる一手を計算していた。

 木浪は走者一塁でバントの構えを見せていたが、バッテリーエラーで得点圏に走者が進むとヒッティングに切り替えた。これは岡田采配の特徴の一つで「ベンチがやってはいけないことは“欲を出す”こと」と評論家時代に語っていた。

 実はまったく同じシチュエーションが2019年4月17日にあり、奇しくも神宮でのヤクルト戦。無死一塁で打席には木浪が立っていた。相手のバッテリーエラーで走者が二塁に進んだが、当時の阪神ベンチは送りバントを選択。その結果、失敗して無得点に終わった。

 記者席で見ていた岡田監督は「木浪の打席で送って、1死二塁を作るというビジョンを描いていたと思うけど、当初の目標が達成できたのであれば、ベンチが無理をして1死三塁の状況を作りにいくべきではないんよ」とキッパリ。「たとえ打たせて走者を進められなくても、当初の想定通り1死二塁から攻撃を進めていけばええ。仮に木浪を打たせて右方向へゴロが転がれば、進塁打になる。シングルヒットであれば無死一、三塁、長打なら勝ち越しという可能性も十分に考えられる。相手にもらったチャンスで、ベンチが“欲”を出して選択肢を狭めるようなことはしてはいけない」と評論していた。

 あれから4年、その言葉どおり木浪を打たせて1死三塁の状況となり、2死後、近本の適時二塁打で貴重な1点を奪った。矢野前監督のように選手と一緒になって喜ぶのも指揮官の一つの姿かもしれない。だが岡田監督は素早く次の一手に向けて行動を移し「勝負師の視線」を相手ベンチに向けていた。守護神の湯浅が離脱し、エース・青柳、正捕手・梅野の不振などチーム状態は万全とは言えない中、4月は貯金を持って通過することが決定している。

 「4月はまだチームが戦う形を固める時期」と以前から語っていたように、投手陣では村上、大竹、石井ら、野手では坂本、井上、木浪ら“新戦力”が奮闘している。就任1年目、まだはっきりとチームの形が決まらない中で勝利を呼び込んでいる岡田監督。怖さすら感じる「勝負師の視線」が安定した戦いを見せている要因の一つかもしれない。(デイリースポーツ・重松健三)

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