【野球】92年キャンプ初日の発熱ダウンがなければ 「タレント長嶋一茂」は存在していないかも

 もし、1992年のキャンプ初日に発熱ダウンしていなかったら。果たして人気タレント・長嶋一茂(56)は存在していたのだろうか。

 ついにプロ野球12球団の春季キャンプがスタートした。日本ハムのビッグボス・新庄剛志の指導法、監督不在でスタートした日本一球団・ヤクルトや今季限りで球団を去る矢野燿大監督率いる阪神の動向など話題は尽きないだろう。

 そんな中、思い出したのが92年の米ユマキャンプ初日(現地2月1日、日本時間2日)に、38・2度の熱を出し、いきなり練習を休んだ長嶋一茂のことだった。

 この年、一茂はレギュラー獲得に向けて、自主トレ期間中に落合博満に弟子入り。三冠王打法を引っ提げて、初日から特打を行うなどアピールする予定だった。ところが、初日から練習に不参加。朝の散歩には参加していただけに、現地で取材していた私は、何が起きたのか分からなかった。

 人間だから風邪もひく。誰も責めているわけではない。だが、一茂に大きな期待をかけていた野村克也監督(故人)の「鉄人、倒れるやな」と、ため息交じりに発した言葉が耳に残っている。

 一茂は2日遅れで現地3日(日本時間4日)から、練習に合流した。だが、このわずか2日の合流遅れがターニングポイントになったかもしれない。この年、MVP、本塁打王、首位打者を獲得したジャック・ハウエルが外国人選手としては珍しくキャンプ初日から合流。野村監督から「投げ方は内野手向きやな。打撃も、外国人特有のヒッチするなどの悪い癖がない」と高評価を受けてたからだ。

 結局、この出遅れが響いたのかもしれない。一茂が獲得を狙っていた三塁手のポジションにはそのハウエルが定着。一茂は球団に米国への野球留学を直訴して4月1日に渡米。ドジャース傘下の1A・ベロビーチで5カ月間プレーすることを選択した。この年、ヤクルトは14年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、一茂は1試合も出場することなくシーズンを終えることになったのだ。

 シーズン終了後、父・長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)率いる巨人に金銭トレードで入団。最終的には96年のシーズンを最後にユニホームを脱いだ。成績は通算7年、18本塁打、82打点、打率・210だった。

 その後はタレントやTVのコメンテーター、俳優として大活躍。今やテレビに出演しない日はないほどに多忙な生活を送っている。だが、あのミスタージャイアンツ・長嶋茂雄のDNAを受け継ぎ、三冠王・落合も絶賛した能力が開花しなかったのは、少しもったいない。もし、92年の春季キャンプで、初日から調整が順調にいっていれば-どんな選手になっていたのだろうか。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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