【スポーツ】東京五輪の夢途絶えた兄の分まで ボクシング世界ユース優勝&MVPの堤麗斗

 先月行われたボクシングの世界ユース選手権(ポーランド)の男子ライト級で優勝した堤麗斗(18)=東洋大=が1日、優勝報告会を行った。日本ボクシング連盟によると、同大会での日本勢金メダルは、堤の兄で2016年にフライ級を制した堤駿斗(21)=同=以来で2人目。都内のホテルで隔離中にオンラインで報道陣の取材に応えた麗斗は、最優秀選手(MVP)にも選出された今大会の躍進の陰に、兄の存在を挙げた。

 強豪のカザフスタン選手に4-1で判定勝ちした決勝。1回にジャッジの判定が3-2と割れ「正直、自分の想定していた展開と違っていた。(優勢だった)2回が終わった時には焦りもあった」と言う。しかし、最終3回を前にセコンドから「お前、兄貴を超えるんだろ」とゲキが飛び「その声に励まされて、やってやるという気持ちになった」と3回も制した。

 16年に日本勢で初めて世界ユースを制した兄の駿斗は、東京五輪の日本代表候補の中では最年少でありながら、金メダルを狙うエースとして期待されていた。しかし、昨年3月の東京五輪アジア・オセアニア予選で敗退。最後の望みをかけた今年の世界最終予選はコロナ禍で中止になり、五輪への道は完全に閉ざされていた。

 今大会の苦しい試合で麗斗は「家族を思い出した」と言う。父の直樹さんがトレーニング指導を行うなど家族一丸で競技に励んできただけに「ここで負けたら堤家がやっぱりダメだったと思われる、絶対に勝たないといけないと思ったのが(勝因として)一番大きかったかも」と振り返った。

 「兄貴は東京五輪にすべてをかけてきた。堤家も東京五輪で金メダルを獲るのが一番の目標だった」。兄の活躍も重圧も無念も、誰より近くで見てきた。それだけに、夢が断たれた後も家族に心の内を見せない姿に胸が痛んだ。「自分が優勝して、やる気を戻してあげられたら」。その思いが大きなモチベーションになった。

 兄と同じ東洋大の1年生。目指すのは「24年パリ五輪の金メダル」と明確だ。そして、その前にもう一つ「堤家」としての夢がある。「世界選手権で兄弟同時金メダル。まだ世界選手権で優勝した(日本)人はいないし、兄弟同時優勝もないと思う。自分と兄貴と一緒に2人で優勝できたら」。弟の戴冠によって、兄の再スタートの号砲も鳴らされた。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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