【スポーツ】震災から10年、コロナ禍、進退懸けて…「特別な場所に」白鵬が背負う宿命

 大相撲の横綱白鵬(35)=宮城野=にとって特別な3・11となる。東日本大震災から丸10年の日、36歳を迎える。誕生日を東京で迎えるのも10年ぶり。2011年は八百長問題で大阪開催の春場所が中止になり、今年の春場所(3月14日初日、東京・両国国技館)は新型コロナウイルスのため、東京開催に変更された。

 大横綱も運命の巡り合わせを感じずにはいられない。「誕生日を東京で迎えるのは震災の時ぶりだからね。不思議な節目というか。もう生まれた子が10歳。実際に東北行った時にね。ものを覚えているというか相撲というものを意識している子が8歳や10歳でしょ。もう高校3年生や大学生なわけでしょ?逆にそういう子たちの声を聞いてみたいね。私の場合は早かったような気がしますけどね。振り返ってみれば、一つ一つこうしゃべれば、今日では終わらないけど」と、10年の時の重みを思った。

 宿命を背負い、復興に尽力してきた。毎年、被災地を慰問し、横綱土俵入りを披露し地を鎮めた。震災後の6月には日本相撲協会として東北の被災地を巡回して慰問。岩手・山田町では「(白鵬の)土俵入りの後、3月11日以降毎日続いていた余震がおさまった」という逸話も残る。

 東北の被災地には力士会として土俵も寄贈してきた。「やっぱり東北の被災した子供たちを応援していく、という10年間というね。それが子供全体、という考えの中で、やっぱりこう相撲の良さを知ってもらいたいという思いで、力士会として一つになって、一団となって土俵を贈呈したわけですけど。その土俵が今、生きているというのがね、うれしいし、またアマチュア、もちろんプロに、大相撲に入ってもらうのが一つの、そういう物語じゃないんですかね」。いつか、贈った土俵で育った若者が角界入りすることを期待する。

 先日2月13日には福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が起きた。10年前の余震だという。横綱の記憶も鮮明によみがえる。「まあとにかく怖かったからね。この前の土曜日(2月13日)も怖かったけどね」。決して忘れてはいけない。

 この10年、横綱として角界の頂点に君臨し続けてきた。前人未到44度の優勝を重ね、今もなお第一人者。東京の春に気合が入る。

 「3月場所、東京で相撲を取るのは初めてだからね。まあ初めてのことが好きだから。いい結果を出して、今でも横綱が頑張ってるんだ、というのを見せられれば、私たちも頑張らないといけない、という励みになってくれるんじゃないかと思うね。(特別な場所に)ならないといけないだろうし、そういう場所にしたいね」と、復興祈願の賜杯を誓う。

 異例の場所で常に責任を果たしてきた。野球賭博問題を受け賜杯のなかった10年名古屋場所で全勝優勝し、泣いた。八百長問題で技量審査場所となった11年5月も優勝。そして昨年春場所、史上初の無観客開催を制したのも白鵬だった。

 「もう春連覇、目指してますよ、それは。まあ東京で春場所は初めてですからね。初めてということは好きですから」。幕内100場所の節目、本人も優勝する気が満々だ。

 コロナ禍の中、本人が年明けに感染している。味覚、嗅覚は消え、ウイルスの恐怖も味わった。入院で体力も低下。そんな中、2月24、25日の合同稽古では計60番も取って、不安を一掃してみせた。

 昨年11月場所後、横綱審議委員会から横綱鶴竜(陸奥)とともに史上初の「注意」決議を受けた。4場所連続休場で進退が懸かる。ただ、震災復興、コロナからの復活…、背負う責任が大きいほど、白鵬は強い。(デイリースポーツ・荒木 司)

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