【野球】「大きな挫折」原動力に米独立Lで監督などを務める松坂氏 MLB目指す選手指導

 夢は、MLBのトップから野球を始めたばかりの子供まで世界をつなぐこと。これが、ある人の口から語られると、大仰に聞こえない。松坂賢氏(28)。現在は米独立リーグの経営に関わり、国際スカウト、監督も務め、個人では野球アカデミー主催など、数多くの肩書を持つ。突出した行動力と、説得力の主に迫った。

 大阪は淀川の河川敷。公園や遊歩道、野球場など整備された施設ではなく、ただの空き地部分に、松坂さんの姿があった。目的は、レッスンだ。主催する「パラカイエベースボールアカデミー」の生徒1人に、空き地でバッティングを教えていた。

 松坂さんは通常、米国に滞在しており、アカデミー生約20人はLINEを利用した動画を通じてのレッスンとなるが、帰国時の合間にこうして直接教えることもあるという。

 道具はバット1本と、プラスチックボールと、そのへんに張ってあった防球ネット。ただこの光景を深掘りするにつれ、私の興味はどんどんかき立てられていった。

 この日の生徒は国内独立リーグ某球団に所属する選手。希望は「メジャーで通用するバッティングを教えて欲しい」だ。松坂さんは「よし分かった」と応じ、全く土地勘のない大阪でバットを振れそうな場所を見つけ、レッスンを施した。

 横浜で生まれ、小学校低学年から野球を始めた。高校は甲子園常連校に進んだが、なじめずに埼玉の県立高校に転校。とはいえ、野球を辞める気はさらさらなく、山梨学院大では捕手を務めた。そして『メジャーリーガーになりたい』という大望を抱いた。

 卒業と同時に米国でトライアウト受験。残念ながらMLBから声がかからず、米国に8つある独立リーグの一つと契約した。MLBのルーキーもしくは1A程度というレベルの中で自己研さんに励んだが、夢かなわず2017年、引退を決意した。

 翌年、最後に所属したエンパイアリーグのスタッフとなると同時に、個人でアカデミーを始めた。校名の「パ・ラ・カイエ」とはスペイン語で「道筋」、「場外ホームラン」という二つの意味を持つ。

 自身は「大きな挫折」とMLBを諦めたが、これも原動力となった。昨年にはスタッフ兼のみならず、全球団のコーチ、1球団の監督、さらにはスカウトまで任された。

 米国ではMLBを目指す選手に「ここが嫌なら上に行け。無理なら家に帰れ」と教えている。日本の独立リーグは「考えられないほど恵まれている」とも言う。本当のハングリーを経験し、MLBを本気で目指したからこそ、松坂さんはフットワーク軽く見知らぬ土地の河川敷に行き、本物のコーチングを施すことができる。

 将来の肩書は、まだ見えない。ただ「日米の関係を深めるため、どこにも属さず、どこにでも影響力を持てる人物」に、なっているだろうな、と思わせてもらえた。(デイリースポーツ・西下純)

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