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【スポーツ】ラグビー日本代表が次なる壁を越えるには 南ア戦「後半勝負」方程式崩壊の理由

 一つの壁を乗り越えた先に、新たな壁が立ちはだかった。南アフリカの劇的な優勝で終えたラグビーW杯日本大会。日本は史上初めて1次リーグを突破し、目標だった8強進出という結果を残した。準々決勝では南アフリカを相手に3-26で完敗した。試合後の選手の中に、達成感や充足感はなかった。準々決勝で敗退した原因、そして、さらに上を目指すには何が必要か。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC=49)や選手の言葉からひもとく。

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 日本ラグビー史の歴史に新たな1ページを刻んだW杯8強進出。日本中が歓喜に沸く中で、選手の思いは少し違った。

 準々決勝敗退直後の会見でリーチ主将は言った。「満足感はない。日本チームでプレーできたこと誇りに思う。満足、不満足とかはない」。取材エリアでは稲垣が「誰もベスト8に満足していない。今後はどのように決勝トーナメントを勝っていくかを突き詰める必要がある」。もちろん笑顔はなく、いつもの厳格な表情だった。

 なぜ南アフリカに負けたのか。ジョセフHCは「ハーフタイムで選手たちが少しダウンしていました」と後半の失速を敗因に挙げた。

 小さい体で、大きな相手に勝つ。“小よく大を制す”ラグビーの確立のため、合宿を通じて、体力面で屈強な他国に負けない体力をつけてきた。「後半になれば相手はバテる」。多くの選手から聞いた言葉だ。前半を終えて3-5。後半勝負の青写真。結果は逆だった。

 バルは「後半になってからミスがあった。セットプレーでペナルティーとか取られてしまったので、そこが敗因」。後半勝負の方程式は、決勝トーナメントでは崩壊していたのだった。

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 「日本は1次リーグ4試合を全力で戦った。相手はメンバーを替えながらやってきた。その差があった」。中村の言葉だ。31選手中、5選手が一度も試合に出なかった日本。他の8強進出チームはメンバーを入れ替えながら、余力を持って決勝トーナメントに進出していた。

 印象的だったのは準々決勝前の南アフリカの会見。海外メディアが「いよいよW杯が始まりますね?」と質問したのだ。違和感を覚えたが、会見は平然と進む。1次リーグを調整試合的な感覚でクリアする。決勝トーナメントでさあ、本番。疲弊しきった日本とは大きな差があった。

 田村は言う。「4連勝でベスト8に入って、今週はきつかった。5試合連続で出てる選手がほぼいたので、100%の準備をしたいというのと、体、メンタルのコンディション。そこの難しさはあった」。想像以上の心身の疲労が選手にはあった。

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 4年後に向けて、必要不可欠なこと。まずは現在のレベルを維持し、それ以上の力をつけること。その上でレギュラーと控えの差をなくす、つまり選手層を厚くすることだ。田中は「次は海外で活躍できる、認めてもらえるプレーを全員でできれば」と言う。海外でプレー経験のあるベテランは個々のレベルアップに言及した。

 そして、さらに下の世代に普及させて全体的な底上げをする必要がある。

 常に底辺拡大を訴えていたのはベテランの田中だ。大会後は何度も涙を見せた。「自分が11年以降思い描いていた絵が目の前に広がったので、負けたのは悲しいけれど、日本ラグビーの幕開けじゃないけど、ここからまた進化していけると。ファンを見ていたら思ったので涙が流れた」

 15年大会は1次リーグで南アフリカに勝利。だが盛り上がりは一過性のものだった。そんな“絵”を色あせないようにする必要がある。

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 敗退が決まった翌日。全選手が出席して一夜明け会見が行われた。堀江が「これを“継続”せなあかんなと思います。ラグビーが認知されて、人気をキープできるかというのが僕らの仕事。選手だけではできない。協会など全員含めて、みんな上がっていければ」と訴えたのは、盛り上がりの持続だった。

 会見後の食事会を経て、日本代表は解散となった。リーチ主将があいさつに立ち、泣きながら話したという。「このチームを作ってキャプテンとして誇りに思っている」。“ONE TEAM”が成し遂げた一つの成果。4年後、そして将来につなげてこそ、その涙の意味はさらに大きなものになる。(デイリースポーツ・鈴木創太)

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