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【スポーツ】新小結竜電 史上10位のスロー昇進、愚直な若武者の今後に注目

番付表を手にする竜電。右は師匠の高田川親方=24日
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 愚直な若武者が地獄を乗り越え、三役に上がった。大相撲名古屋場所(7月7日初日)で新小結に昇進した竜電(28)=高田川。初土俵から79場所所要は史上10位のスロー昇進。関取経験者が序ノ口まで陥落し、その後に新三役まで出世するのは史上初となった。

 6月24日の新番付発表時には番付表を手に「少し字(しこ名)が大きくなった」と笑み。「(三役は)今年の目標にしていた。目標を達成できてもっと上を目指したい。うれしい」と喜びひとしお。

 苦労人という言葉では片付けられない道のりがあった。今では少ない中卒のたたき上げ。相撲は未経験の柔道少年が角界に飛び込み、06年春場所で初土俵。素直で周囲の教えを吸収しコツコツ成長。21歳時、12年九州場所で新十両に昇進した。

 だが悪夢が待っていた。その場所で股関節を骨折し1場所で幕下に陥落。その後も計3度、同カ所の骨折を繰り返した。相撲が1年以上も取れないどん底でもがき続けた。

 師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)によれば、次に骨折したら、力士生命どころか日常生活すら困難になる絶望的な状況だったという。「普通は辞める。相撲が取れないんだもん。今もパーンといったら終わり。爆弾を抱えている」。

 師匠は励まさなかった。「お前が悪い。ケガをするのは弱いから」と叱咤(しった)し、突き放した。

 「折れそうになった」こともあったと竜電は言うが、あきらめなかった。リハビリ、患部の強化を地道に続けた。お尻回りの筋肉を鍛え上げ患部を防御。光の見えない日々を歩き続けた。そして、努力は裏切らない。16年九州場所で4年ぶりに十両復帰。昨年初場所で新入幕すると、先場所10勝を挙げて、三役にまで上った。

 右前ミツを取って絞り上げ、頭を付けてぐいぐい攻め上げるのが竜電の必勝相撲。大関高安(29)=田子ノ浦=も参考とする「右の絞り」は師匠の教えのたまものだ。

 師匠は二子山部屋出身(のち藤島部屋)。「土俵の鬼」と呼ばれた初代若乃花の魂が宿る部屋で学んだ昭和の男。その師匠なくして竜電の再起はなかっただろう。

 高田川親方は言う。「稽古しない力士は力士じゃない。そこに尽きる」。自身は現役時代、100番を超える稽古は当たり前。50番以上、若い衆と取って、関取と50番以上。そんな日々を、毎日、繰り返してきた。

 「四股、すり足、テッポウが相撲の奥義。科学的トレーニングなんてのはさぼるための言い訳。(四股、すり足、テッポウは)自分との戦いだから。うちの部屋の稽古は昔の稽古に近づける」。毎日、四股を1時間。来る日も来る日も基礎運動。「脇を締めろ」と言われれば、絶対に両脇を緩めない。師匠の言葉を信じたからこそ竜電ははい上がれた。

 師匠自身の最高位が関脇だっただけにまな弟子にその上を託す。「ひとつ目標を達成したけど、自分が果たせなかった優勝、大関、横綱をつくりたい。竜電には相撲道にもっとまい進して上を目指してほしい。竜電は稽古も真面目。ここが終着点じゃない」とはっぱをかけた。

 令和に昭和の相撲を受け継ぐ男。「優しい言葉をかけられたらあきらめてしまっていた。これからも我慢してやっていく。これからも稽古に精進する」。新時代の角界、こんな不器用なサムライに注目したい。

(デイリースポーツ・荒木 司)

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