【スポーツ】フィンク神戸は現実主義的“バルサ化”か 高すぎる理想には釘

 J1神戸の新監督に就任したドイツ出身のトルステン・フィンク氏(51)が15日のFC東京戦(味スタ)で初采配を振るう。吉田孝行前監督(42)の退任に伴い、8日に監督就任が発表されたが、就労環境が整っておらず、練習で選手を直接指導することはできなかった。試合前日の14日午前にようやく就労ビザが発給され、Jリーグへの追加登録も完了。“ぶっつけ本番”で初指揮を執る。

 来日初の取材対応となった14日には「素晴らしいクラブのリーダーとして仕事ができることを光栄に思っています。クラブのために24時間働きたい。たまには寝なければいけませんが(笑)」と冗談も交えつつ、日本での初仕事に強い意欲をにじませた。

 神戸は昨季からスペインの名門バルセロナをモデルに掲げ“バルサ化”を推し進めてきた。だが、スペインでのプレー、指導歴が一切ないドイツ人指揮官を招聘したことで“バルサ化”との整合性に疑問符も投げ掛けられていた。神戸の三浦淳寛スポーツダイレクター(SD、44)は11日、周囲の疑念を振り払うように“バルサ化”の継続を宣言。フィンク氏も「サッカーに対するアイデアが似ていたのが一番」と監督就任の決め手を語り、クラブが求めるボール保持を基盤としたサッカーを継承する考えを示唆した。

 ただ、フィンク氏の発する言葉からは、現実主義者の側面を色濃く感じ取ることもできる。新指揮官は「(神戸に)理想があるのは知っている」と理解を示した上で、「バルサのサッカーはバルサにしかできない。(神戸が)理想としていたのは栄光時代のバルサだったと思う」と語った。世界を凌駕したグアルディオラ時代のバルセロナを念頭に、高すぎる理想に釘を刺し、「ポゼッションにもいろいろある。マンチェスターC(イングランド)やバルセロナのように攻撃的にやるのか、ユベントス、ACミラン(ともにイタリア)のようにディフェンシブなところからポゼッションで前方に持ち上がっていくのか。ポゼッションサッカーというより、ボールを持っての攻撃的サッカーというものを意味するのではないか。そういうスタイルに持っていきたい」と、神戸が目指す“バルサ化”について持論を展開した。

 さらにフィンク氏は神戸の最高成績が7位だったことにも触れ、「先ほど言ったチーム(マンCやバルセロナ)のようになりたいというより、自分たちのアイデンティティーを見つけ、ヴィッセル神戸の選手たちに合うバランスを見つけたい」と、地に足を着けた取り組みを強調した。チームの改善点として守備面を挙げたことも含め、スペイン人のフアンマヌエル・リージョ元監督(53)に比べて吉田前監督に近い、より現実的なサッカーを指向しそうだ。

 「大事なのはファーストステップを踏むこと。それ以上考えると転んでしまうので、まず目の前のことに集中する。ステップ・バイ・ステップです」。神戸の三木谷浩史会長(54)を筆頭にクラブ首脳が描く理想と、フィンク新監督が求める現実路線とのギャップをどのように埋め合わせていくのか。新指揮官の初陣に注目が集まる。(デイリースポーツ・山本直弘)

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