【野球】球宴“強行出場”の是非 中日・松坂らに透けて見えるスター選手の苦悩

 明らかに本調子ではなかった。13日、オールスター第1戦に中日・松坂大輔投手が先発。12年ぶりの夢舞台だったが、1回で2本塁打を浴び、5失点と打ち込まれた。

 背中のねんざで1カ月以上も登板がなく、“ぶっつけ”のマウンド。結果は散々で、松坂は「何とか投げられるようにと思ったが、もう少し長いイニング、もう少しまともなボールを投げたかった」と落胆した。

 試合後のコメントからも、急ピッチで調整したことがうかがえる。どん底から復活を遂げ、ファン投票でトップ選出。期待を一身に背負っていただけに、辞退の選択肢はなかったかもしれない。現役時代に6度、球宴出場の経験がある本紙評論家の谷佳知氏は「ファンあってのプロ野球。ファン投票で選ばれるのは、ものすごく名誉なこと。松坂もうれしかったと思うし、投げてくれたことは良かったと思う」と、ファン目線で語った。

 ただ、選手の苦しい胸の内も透けて見えた。松坂だけでなく、阪神・糸井嘉男外野手は六回に代打で“強行出場”。6月30日に死球を受けて右足腓骨骨折。現在も2軍調整中の身で、足を引きずりながら歩く姿は痛々しく映った。全セには右太もも痛で離脱しているDeNA・ロペスもおり、第2戦の出場が見込まれる。

 もし、球宴を辞退すれば後半戦初戦から10試合は出場できない“ペナルティー”を科せられる。過去、球宴の出場辞退者が続出したり、辞退した選手が後半戦のスタートから活躍したりしたことで、設けられた規定だ。これ以外にもファン投票で選出された野手が必ず2試合の出場が義務づけられるなど、球宴には細かなルールがある。谷氏は「過去、いろいろなことがあってルールができた。仕方がない面はあるが、けがをしている状態で無理せざるを得ないというのは心配」と、選手の今後を案じる。

 米大リーグの球宴は1試合。選手の数も多く、選出されても出場しない例は少なくない。昨季まで巨人に在籍していたカージナルス・マイコラスも前半戦最終戦で先発することから、球宴の登板回避が決まった。一方でパレードに出たり、社会貢献活動をしたりすることに“意義”があるとされ、マイコラスも球場を訪れて球宴には参加するという。

 球宴の開催はファンに希望を与え、プロ野球界の貴重な収入源でもある。そこに理解を示した上で、谷氏は「1試合でもいいのではないか。そうすれば選手の負担ももう少し軽減されるとは思う」と提言する。

 球宴前に一定期間の出場がない選手には、ペナルティーの緩和や救済措置を設けることはできないだろうか。ファンあってのプロ野球。ただ、スーパースターの使命感から下した決断が、結果として選手生命を左右する事態にならないことを願う。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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