【野球】“球児級”を期待…阪神・望月惇志の圧巻復帰劇

 マウンド上にそびえ立つ20歳の若き投手に、心が躍った。プロ3年目、望月惇志。3日に今季初の1軍昇格を果たすと、出番はその日に突然、訪れた。

 2年ぶりの本拠地マウンドだった。八回に4番手として、今季初登板。期待の若虎だけに、虎党が固唾(かたず)を飲んで見守ったが、その初球。制球された153キロの直球が原口のミットに収まり、球場がドッと沸いた。3球目で京田を左飛に打ち取ると、これが始まりの合図となった。続く平田を変化球で空振り三振に斬って取ると、さらにはビシエドは外角いっぱいの直球で見逃し三振。鳥肌ものの投球だった。

 九回も続投。5番・工藤&代打・モヤを変化球で空振り三振に斬って取ると、7番・福田を迎えた。1球ごとにどよめきと歓声が起こる。そして3球目。直球で空振り三振に仕留め、圧巻の5者連続三振。最速は155キロを計測する鮮烈な復帰戦となった。

 虎党もが目を真ん丸にさせた衝撃の23球。中日打線で対決した選手たちをうならせるには十分だった。「いい直球に加えて、スライダーとフォーク。上で投げている投手のレベルだった。みんなが『まっすぐが速い』って言ってたから、それに負けないように打席に立とうと思ったけど、予想以上にキレのいいストレートで…」。工藤が対策以上の直球に驚くと、「タイミングがとりにくくて、速い。ボールがきれい」とは3球三振を喫した福田。さらには強打者の平田も強く警戒した。

 「直球がすばらしい球だと思う。すごいいいピッチャーだと思う。球質でいうと、(藤川)球児さんみたいなイメージ。もっとあそこから成長したときに、バットに当たらないかもしれないですね」

 現在セ・リーグの首位打者を広島・丸と僅差で争う平田が、あっという間に終わった望月との勝負をこう振り返った。わずか5球の中で見た右腕の可能性。今後の対戦を見据え、大粒の汗をぬぐった。

 望月は、度重なるケガに泣いていた。そして昨オフ、腰部ヘルニアの手術を決断。その後もはやる気持ちを押し殺し、懸命なリハビリ生活で一歩ずつ進んだ。「ケガとかいろいろあったんですけど…。1軍のマウンドで投げられて本当に気持ちよかった。応援もすごくしてもらえて、甲子園はいいマウンドだなと思いました」。地道なリハビリを続け、つかんだ2年ぶりの1軍昇格。2016年10月1日巨人戦以来となるマウンドからの甲子園の景色は格別だった。

 まだスタートラインに立ったばかり。苦しみ、悩み抜いた先にある新しい光を探していく。(デイリースポーツ・松井美里)

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