【サッカー】引退発表の石川直宏、貫いたFC東京への思い

 サッカーのJ1・FC東京の元日本代表MF石川直宏が2日、今季限りで現役を引退すると発表。同日に都内の練習場で会見も行った。02年にFC東京入りをしてから今年までで16シーズン。クラブの生え抜きではないものの、今ではFC東京を象徴するような選手となったアタッカー。シーズン途中の引退発表には石川なりの思慮、そして熱い思いが込められていた。

 6月末には既に引退を決めたという石川。近年は度重なる負傷に泣かされ、満足いくプレーができていなかったが、引退を決断したことで「モヤモヤしていたものが晴れたというか。不思議ですけど。自分の中ではすごい、去年から悩んでいたのが、6月末に迷いなく決断できたところから、何か晴れたじゃないですけど、余計なことは一切考えず、やるしかないという気持ちになったので」と晴れやかな表情を浮かべて、引退会見に臨んだ。

 8月2日に発表をしたのは、結果的に引退の一因となった左膝を負傷した親善試合・フランクフルト戦からちょうど2年ということに、夫人の誕生日ということもあった。「その日に引退会見ってどうだって思ったんですけど、それもまた忘れられない日になるかなと。すべてをひっくるめて良い日に変えたいんで」と笑う。

 ただ、もちろんそれだけではない。02年に横浜Mから加入した際から「チームの顔になる」ということを意識してきたからだ。「移籍してきたときに自分が思い描いていたのは、マリノスに“レンタル移籍から帰ってきてくれ”と言われて、かつFC東京から“残ってくれ”と言われる状況をつくること。そこはできた」と振り返る。

 そして「今度はレンタルが終了して完全移籍をするか否かというところで、松田(直樹、故人)さんと話をしたときに『まだマリノスではクラブの顔になるまでに時間がかかるかもしれないけど、FC東京で今のプレーをつづけていたら、まちがいなくお前はFC東京の顔になるよ』と。自分はその言葉にすごくピンと来て。マリノスにいた自分であっても、そういう姿を示し、そういう思いのプレーがあれば、チームの顔としてあるいは象徴として、戦い続けることができる。そこのところにすごく魅力を感じました。それが完全移籍にいたった経緯でもある」。だからこそ、停滞気味のチームの現状に何か“変化”をもたらしたかった。

 「ぎらついていた選手が、ウチにくるとおとなしくなることもある。それがとても怖いことだと思う。このクラブの持つ雰囲気がそうさせているならば、そこには僕も責任を感じる。もっと言い合うような雰囲気も作れれば」。これまで、そういった考えはプレーで示すことが一番だと思っていた。ただ、自身の膝の状態を考えれば、それは簡単ではない。このタイミングで引退を発表することで、もう一度チームが一丸となること、そして上昇のきっかけとなる狙いもあった。そんな決断に、篠田監督は「本当にナオらしい決断だなと。チームとしてもその思いに応えたい」と語る。

 貫いたFC東京への思いが、形となって表れた8月2日の引退発表会見。数奇な運命にも思えるが、8月2日は松田直樹さんが6年前に倒れた日でもあった。松田さんを慕ってきた石川にとっては、悲しみを感じる日でもある。ただ「起こることはすべて善きこと」を心情に持つ石川は、さまざまな思いを背負いながらも、前を向いて歩いていく。「ここから先は自分としても不安ではなく、楽しみでしかなくて。どういう影響を与えられるのか。クラブがどうかわっていくのか。半年あるので、今までの振り返りはなく、すべてのシーズンが終わってから、次へのステップとしてチームを去りたいと思います」。(デイリースポーツ・松落大樹)

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