【野球】大阪桐蔭・西谷監督5度目V 選手勧誘のポイントは技術より“野球小僧”

 第89回選抜高校野球大会は大阪桐蔭が、春夏連覇を果たした12年以来、5年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。西谷浩一監督は春夏通算で5度目の甲子園優勝となり、渡辺元智氏(横浜)に並んで歴代2位タイとなった。

 甲子園通算勝利数も42勝として、大会中に木内幸男氏(取手二、常総学院)を超えて歴代6位。98年秋の監督就任以降、驚異的なペースで勝利数と優勝を積み重ねている。

 同校は中村剛也(西武)、中田翔(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)らプロ野球で活躍するOBが多い。突出した能力を持つ選手が注目されがちだが、西谷監督を中心に常に総合力の高いチームを作り上げている。

 要因の1つは、西谷監督が行う中学生の勧誘だろう。選手を見るポイントは技術よりも、野球への情熱。“野球小僧”を求めている。

 「もちろんうまい選手が来てほしいけど、うまい選手であって、本当に野球が好きかどうか。そこが大事。うちの練習は厳しい。でも、その中で、大阪桐蔭でやろうという憧れを持ってもらって、その後も野球を続けて勝負したい、と。そういう子たちと3年間やりたい」

 今回の優勝メンバーにも“野球小僧”は多い。エース・徳山壮磨投手(3年)は、中1で「大阪桐蔭から声を掛けてもらえる選手になる」と目標を設定。今も周囲から一目置かれるほど野球に対して真剣に取り組む。根尾昂外野手(2年)も個別練習は最後まで行うことが多く、ベッドが健康器具で埋まるほど野球に向き合って生活している。

 もちろん練習もハードだ。入学後の厳しい走り込みや、基本の繰り返しなどが徹底される。基礎能力の向上が全体的なレベルアップにつながっているが、西谷監督は人間教育にも気を配る。

 寮生活の選手とはノートを交換。会話ができなくても、生徒と向き合う時間を作る。「私も高校の時にノートとかで、先生方に一言書いてもらうことが励みになったし、叱られてグサッとくることもあった。文字は残るし、あとで見直せる。文字の裏にどんな気持ちを持っているのかということも、想像してもらいたい。きれいな字じゃないけど、書くことは多い」。選手は西谷監督を「怖い」とは言わない。高校生の年代で身近に相談できる存在がいることは、成長の一因となっているのだろう。

 西谷監督は20年以上、大阪桐蔭に関わってきた。だが、1度も辞めたいと思ったことはないという。

 「ストレスと感じたことはない。毎日いっぱいいっぱいだけど、好きでなった職業なので。うれしいし、苦しい時もある。でも、ストレスではない。うまくいかないことはいっぱいあるので、イライラすることもある。それを世の中ではストレスというのかもしれないけど、自分はそういう風には思ってない」

 監督自身が真剣に野球へ向き合うからこそ、魅力的な選手が集まるのだろう。そして、寮生活を経て、同じ方向を向いて戦う集団となる。「歴史は浅い学校だけど、少しずつそういう(一体感を持つ)風土が寮にも野球部にもできてきているんじゃないかと思いますね」と西谷監督。大阪桐蔭は今、“黄金期”を迎えている。(デイリースポーツ・西岡 誠)

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