登坂 劇的残り3秒で大逆転金メダル「本当に最高です」

 「リオ五輪・レスリング女子フリースタイル48キロ級・決勝」(17日、カリオカアリーナ)

 女子48キロ級で、登坂絵莉(22)=東新住建=が金メダルを獲得した。3連覇を達成した昨年の世界選手権決勝で破った前回ロンドン五輪銀メダリストのマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)との決勝では土壇場で逆転し、初めて挑んだ五輪で頂点に立った。この階級での日本勢の「金」は、ロンドン五輪の小原日登美に続く2大会連続となった。

 真骨頂の集中力は、初めての大舞台でも研ぎ澄まされた。1点リードを許した試合終了10秒前、執念の片足タックルに入った。残り3秒でバックを取り、大逆転で金メダルをもぎ取った。表彰台のてっぺんに立ち、「本当に最高ですね。重いです」と金メダルの感触を確認。君が代を聴きながら涙を流した。

 「最初に失点すると思わなかったし、試合中にどうしようとパニックになった。(3連覇中の)世界選手権と五輪は全然違う」

 セコンドの栄和人チームリーダー(56)を“恒例”の肩車で担いだ。指揮官は「計算ずくじゃないけど、こんな劇的な勝ち方があるのかと思った。毎回肩車してくれる人がいるのは幸せ。指導者冥利(みょうり)に尽きる」と涙を流した。

 決してエリートではない。小学3年から高岡ジュニア教室でレスリングを始めたが、国体優勝選手だった父・修さん(52)は「すぐに辞めるだろうと思った」と振り返る。「痛いしキツいし苦しいし、女の子だし音を上げるだろうと」。しかし、生まれながらの運動好きに火がついた。

 保育園のころから活発で、日が暮れるまで毎日遊び回った。夏休みには、外で一番日に焼けた子に贈られる賞を毎年受賞。運動は何でもでき、自転車の補助輪が外れたのは3歳のとき。負けず嫌いは幼少期から折り紙付きで、試合で負けた相手の名前は勝てるまでノートに書き殴った。

 至学館大で才能が開花し、世界選手権で3連覇。憧れの吉田沙保里とは、今では公私ともに常に一緒に行動する先輩であり親友だ。「リオで一緒に金メダルを獲ろうと約束した」。栄チームリーダーは「登坂は吉田、伊調を継ぐ選手。東京での2連覇は絶対やってくれる」と期待を込めた。

 2020年のエース候補は言う。「東京五輪では絶対に金メダルを獲りたい。今よりもっと競争がすごいと思うけど、誰にも負けないように」-。期待もプレッシャーもすべて背負う。尊敬する偉大な先輩がそうしてきたように。

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